サンケイビズ「消費税増税」ではなく
「税収増」目指せ
【ついき秀学のMirai Vision】2011.1.14 転載
mhttp://www.sankeibiz.jp/macro/news/110114/mca1101140502006-n1.ht
年初から、「消費税増税」の論議が再燃しています。菅直人首相は
テレビ番組で、消費税率の引き上げを含む税制改革について、
「政治生命をかけて覚悟を決めてやっていきたい」と発言。
野田佳彦財務相も財務省幹部への年頭挨拶(あいさつ)で「政治生命、
命をかけていく」と、並々ならぬ意気込みを見せています。
菅政権は6月をめどに方向性を示す考えですが、マスコミも
「消費税を含む税制改革論議が待ったなしなのは、首相が言う通り
『誰の目にも明らか』である」(読売新聞1月5日付社説)などと
エールを送り、増税に向けた世論誘導も進んでいます。
増税の前に政府は努力
政府は、2011年度予算編成で、基礎年金の支給額2分の1の
国庫負担2.5兆円の財源が足りず、これを消費税増税分の税収で
まかなうつもりです。しかし、2.5兆円の税収を得るのに、本当に
消費税を上げるしか方法がないのでしょうか。
例えば、民主党は昨年の参院選で「国家公務員の総人件費2割削減」
(削減額1.1兆円)を公約に掲げていました。しかし、現実の
削減額はわずか190億円にとどまっています。自ら掲げた公約の実現
に努力することもせず、増税ありきの議論をするのは順番が違うと
言わざるを得ません。
そもそも増税しても税収アップにはつながるとは限りません。
消費税が導入された1989年は、税収自体は増えていますが、
その大部分が所得税の増収分で、90年代に入ると税収は下がって
いきました。97年に税率を5%に引き上げたときも税収は落ち込ん
でいます。さらに、昨年10月にたばこ税が増税になりましたが、翌
11月のたばこ税収は前年同月比65.3%減の237億円と、単月
としては伸び率・金額共に過去最低に落ち込んでいます。
逆に、税収が増えた時期は、決まって景気が拡大したときです。
つまり、今必要なのは日本経済を成長軌道に乗せるための景気対策
であり、成長戦略です。
好景気による自然増を
景気回復を図る上では、まずデフレを克服する必要があり、その
ために有効なのが金融緩和です。日銀は昨年10月に決めた包括緩和
で、ゼロ金利政策を復活させるなどしましたが、当時0.090%
だった金利(無担保コール翌日物)は、1月11日時点で0.080%
にとどまっており、ゼロ金利に誘導しきれていません
(2001~06年の量的緩和時の平均は0.003%)。
日銀はインフレを懸念して及び腰になっていますが、15兆円前後
の需給ギャップが続く経済情勢を考えれば、さらなる金融緩和を行っ
てもインフレの心配はありません。もちろん、市場に大量のお金を
供給しても、そのお金が回らなければ本当の意味での景気拡大には
つながりません。
そこで、10年先、20年先の未来ビジョンを明確に描き、その
ビジョンを具体化するための成長戦略を策定し、お金の使い道をはっ
きりさせる必要があります。幸福実現党は09年の立党以来、宇宙・
航空・防衛産業、ロボット・海洋開発など、日本の高度な技術力を
生かした、将来性の高い産業への積極的な投資を提案してきました。
他国が容易に真似(まね)できない高度技術・高付加価値産業が国内
で活性化すれば、雇用や収入などが増え、消費が活発になり、その
結果として所得税や法人税、消費税などの税収が増えていきます。
増税の議論を始める前に、こうした成長戦略を考えるべきです。
今、政府が行うべきは「消費税増税」ではなく、「税収増」に向け
た取り組みなのです。(幸福実現党党首)
【プロフィル】ついき秀学 ついき・しゅうがく 1971年、
大阪府生まれ。東京大学法学部政治コースを卒業後、宗教法人
幸福の科学に入局。財務局長、専務理事などを歴任。2009年、
幸福実現党に入党。10年7月、幸福実現党党首に就任。
妻と2男の4人家族。趣味は読書と散歩。