安倍首相の安保政策は老獪なのか
http://hrp-newsfile.jp/2013/1103/ 転載
2013.11.19
◆じわりじわりと国防を強化する現政権
国防・安全保障の分野について、安倍首相はじわりじわりと、改善を重ねる
つもりのようです。
参院選前後で試みた96条先行改正のアプローチは後景に退き、2013年防衛大綱
の策定、日本版NSCの設置、沖縄県連に対して基地移設の説得、特定秘密
保護法案の成立など、憲法改正が議論されない範囲内で、「国防・同盟の強化」
を進めようとしています。
いつか来ると夢見る9条改正に備え、「場」を温めているのでしょう。
◆集団的自衛権の解釈変更を担う安保法制懇
これらに加え、「集団的自衛権の解釈変更」も着々と進められています。
内閣法制局長官には、「ミスター国際法」こと、元・外務省国際法局長の
小松一郎氏が任用され、また、安保法制懇(憲法9条の解釈について議論
する専門家の懇談会)が開催されています。
この懇談会は、首相官邸の私的諮問機関で、第1次安倍政権でも開催されて
いました。第2次安倍政権においても、この懇談会が解釈変更の理論的土台
となることは間違いありません。そしてその4回目の会合が、先日11月13日に
開かれました。
最終的に提出される報告書の中で、「現行の解釈は精緻なものでない」と
いう点が指摘され、ほぼ全面的に、集団的自衛権の行使が容認されることに
なると思われます。
連立を組む公明党(集団的自衛権の行使容認ではなく、個別的自衛権の拡大
の方を提言している)から反対の声があったとしても、日米同盟の深化の
ために、実現しなければなりません。
◆日本の自立に対するアメリカの反応
ただ、集団的自衛権の行使が可能となったところで、全く満足することは
できません。
例えば、9条の下で自衛隊に認められる実力は、「必要最小限度」に限られ
ていて、ICBM、長距離戦略爆撃機は、保持できないことになっています。
軍事独裁の中国や北朝鮮や反日姿勢を堅持する韓国を見れば、日本にとって
「自立した防衛力」が重要かつ緊急であることは明白です。
しかし、日本は、9条改正を初め、国防の自立を勝ち取れていません。
二次大戦の真珠湾攻撃を根に持つアメリカから、圧力がかかっている
からでしょうか。
それも完全に否定できませんが、「自立した防衛力」を求めようとしない
日本政府の弱さが問題です。
アメリカの知日派では、元・国務副長官のアーミテージ氏や国際政治学者
のジョセフ・ナイ氏が有名ですが、彼らは日本で多くの講演活動をする中で、
「日本の憲法改正や核武装は、アメリカとの同盟があるから必要ない」との
趣旨の発言を繰り返しています。
そして「これがアメリカの対日の考え方だ」と言わんばかりに、時折、新聞や
メディアで取り上げられます。
これは、一般に、「日米同盟は日本の再軍備を阻む“瓶のふた”である」
というボトル・キャップ論と言われる対日観です。
このボトル・キャップ論を主張した代表的なアメリカ人、
ヘンリー・キッシンジャーでさえも、今では「日本が憲法改正や核武装を
進めても、反対はしない」と転換しているようです。
実は、アメリカ人の中では、東アジアの安定を確保するために、自衛隊が
「普通の軍」となり、より積極的な役割を果たすことが支持されていると
言われています。
つまり、アーミテージ、ナイ両氏が求めるように、日米同盟の強化を進める
ことはもちろん大切ですが、それだけでなく同時に、「自立した防衛力」を
模索せねばならない時期であります。
◆安倍首相には勇気を振り絞ってもらいたい
最近の、アーミテージ、ナイ両氏を頻繁に取り上げる日本のメディア報道には、
安倍政権の方針が反映されているように思います。
中韓から批判や支持率低下を恐れて、日本版NSCの設置や特定秘密保護法の
制定から段階的に取り組もうとする日本政府にとって、「日米同盟の深化のみ
で足りる、他は要らない」というアメリカの対日観の方が、9条の改正を
先延ばしにできて都合がいいでしょう。
これはある意味、非常に老獪な進め方なのかもしれません。
しかし、結局は国民的議論と納得が必要なのだから、真正面から9条の改正を
訴える方が、大局を見据えた老獪さを持っていないかと、安倍首相に
迫りたいものです。
(HS政経塾3期生 森國英和)
アメリカとチャイナが、カルマの刈り取りのためガチでバトルすることだね。
本当は、日本こそ関係ない。