中国企業、エボラ熱不安で西アフリカから撤退
2014 年 10 月 22 日 ウォールストリートジャーナル
中国土木工程集団の閉鎖された施設内にはクレーンやブルドーザー、大型トラックなどが置かれたままだ。
http://jp.wsj.com/articles/SB12669324362286583938704580229374262817894
【フリータウン(シエラレオネ)】中国土木工程集団の閉鎖された施設内にはクレーンやブルドーザー、
大型トラックなどが置かれたままだ。アフリカへの大手投資家である中国の企業がエボラ出血熱の影響で
まひ状態にあることをまざまざと示している。
同社のチーフエンジニアのリー・ニン氏は、同社の判断で閉鎖したこの施設について「誰も入れない」と話した。
彼はオフィスの壁に沿って並べられたペットボトルの水は半年分はあるはずだとし、「私は外に出ない」と語った。
アフリカ各地で内戦や軍部クーデターなどが起きているにもかかわらず、中国は経済進出を拡大してきた。
しかし、エボラ熱は別の話だ。アフリカ大陸の最大の貿易相手国である中国から来ていた企業は、
西アフリカの国々から多くの労働者を退去させており、貿易は減少、重要プロジェクトは停滞し、アフリカの経済問題は
深刻化している。
エボラ熱が最も流行している3国―リベリア、シエラレオネ、ギニア―と中国との貿易額は昨年、51億ドル
(約5460億円)と、米国と3国との貿易額の約10倍に上った。中国経済は依然、アフリカで産出される資源を必要と
しているが、3国の重要なコモディティーの一部―ギニア産ボーキサイトなど―の需要はこの感染症の流行で減退した。
一方、首都からギニアとの国境に至る道路を再建するという、リベリアでの総額8000万ドルの世界銀行プロジェクトは、
中国河南国際合作集団が8月、不可抗力条項を発動してほとんどの労働者をリベリアから撤収させたことで停止状態に
なった。
中国は同国人の避難の状況を公表していないが、公式の統計によれば、3国に居住する中国人の数は急減している。
商務省は8月、3国で道路建設、鉱業、農業などに従事している中国人の数は推定2万人としていたが、外務省によると
現在の居住者は約1万人だという。
中国人の出国は特にシエラレオネで顕著だ。にぎわっていた大西洋に面したレストランも今ではほぼ空っぽの状態だ。
中国企業が主導していた都市部での建設工事の騒音は、エボラ熱患者を搬送する救急車のサイレンに取って代わられた。
中国土木工程のリー氏は、同社の現場監督や労働者はほとんど帰国して、プロジェクトは棚上げされたと話す。
フリータウンにあるエネルギー大手、中国慶華能源の施設のガードマンによると、同社は今年、シエラレオネでの
大型鉄鉱石プロジェクトを発表していたが、中国人幹部らは既に帰国したという。
中国からのビジネスマンに人気の中国系ホテル、ビントゥマニ・ホテルは、シエラレオネでのエボラ熱対応に当たる
国際医療団に加わっている中国人医療従事者の基地となった。
中国政府は、エボラ熱流行地域の食糧不足に対処するための国連世界食糧計画(WFP)への600万ドルの提供など、
エボラ熱対策として資金拠出や支援策を強調しているが、WFPの中国代表部は20日、中国の企業や富裕層の支援は
十分でないと述べている。
ビントゥマニ・ホテルは、推定5万人が死亡した11年にわたるシエラレオネ内戦の終結1年後の03年に営業を再開。
道路建設や鉱業、住宅建設などの契約を結ぼうとする中国企業が押し寄せる中で利益を上げてきた。しかし、エボラ熱
の流行とともに同ホテルは一部の従業員を帰国させて最低限度のスタッフだけで営業している。
同ホテルは北京城建集団の子会社。
ツァン氏は仕事を離れている時は、ネットのチャットで自分は安全だと家族を安心させるよう努めている。
同氏は「エボラ熱は現実だが、ビジネスチャンスも現実だ」と話す。
他の人は同氏ほど確信が持てないでいる。青島に本拠を置く海産物加工設備メーカーの中国人幹部は、シエラレオネ
から撤退するかどうかを決める前に1カ月ほど同国の状況を調べると話した。この幹部によると、中国から専門技術者を
呼び寄せるのが難しくなっており、一方で今同国にいる中国人従業員たちは帰国したがっているという。
同幹部は「どのようなビジネスにせよ、利益が出るかを見極める必要がある」とし、「熟練労働者が必要だ‥‥
残念ながらシエラレオネがエボラ熱禍からすぐに立ち直れるとは思えない」と語った。
大挙してシエラレオネを後にしているのは中国人だけではない。中国系のスーパーマーケット、ホテルのマネジャー、
ラン・ラン・ジャファ氏は、外国人旅行者が来ることはないし、同国の富裕層も避難していると話した。近くの中国人向け
カジノも建設が中断された。広東省出身の同氏は「逃げ出せる人は既に逃げ出した」と話した。
エボラ熱が流行している国々にとどまっている中国企業は各国政府が流行を終息させる日を切望している。
一つには商売を再開したいからだが、それよりも多くの人が10年以上前に新型肺炎(SARS)の流行が中国経済に与えた
打撃を覚えているからだ。
中国のSARS―そのウイルスは空気感染する―は職場に大きなダメージを与えた。
・厚労省は新方針も…中国経由で「エボラ熱」日本上陸秒読み
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/154321/2
2014年10月23日
エボラ出血熱が猛威を振るっている西アフリカのギニア、リベリア、シエラレオネの滞在者すべてを対象に、
日本入国から21日間、体温や健康状態を毎日2回報告することを義務付ける――
厚労省が21日に示した方針でエボラの日本上陸、感染拡大を防げるのかといえば、はなはだ疑問だ。
「そもそも流行地域から直接上陸するとは限らない。可能性が高いのは、アフリカの最大の貿易相手国である
『中国』経由です」(同省関係者)
中国の昨年の対アフリカ貿易額は2100億ドルで、日本のそれと比べて7倍近い規模に達している。
中国のアフリカ進出企業は日本の6倍以上の2000社とも。それだけ人的交流があれば、感染リスクは高まる。
■情報隠蔽でSARS拡散
「中国の水際対策が欧米に勝っているとは思えません。さらに米国で2次感染を引き起こした感染力の強さを考えれば、
すでに中国に上陸し、発症者が出ている可能性も否定できません」と、医事ジャーナリストの志村岳氏がこう続ける。
「怖いのは、その事実がすぐに公にされない危険があることです。中国政府には、02年に広東省で発生した
SARS(重症急性呼吸器症候群)の情報を隠蔽し、世界中に被害を拡大させた“前科”がある。
そうなったら、日本上陸はあっという間ですよ」
アフリカに渡航歴がある中国人を水際で止めるのは、まず不可能だ。今年1~8月に日本を訪れた
中国人旅行者は前年同期比84%増の154万人、すでに年間の過去最高(12年の142万人)を上回っている。
ご存じの通り、エボラには最長3週間の潜伏期間があるから、空港などに設置されたサーモグラフィーも
すり抜けてしまう。その中の1人でも日本で発症すれば…。
「流行国を中心にアフリカに渡航歴がある人は、エボラが終息するまで出入国を禁止する。
それぐらい思い切った緊急措置を取らない限り、日本上陸は防げません」(志村岳氏=前出)
致死率70%。国連のエボラ担当者は、対応に失敗すれば、12月にも「人類は敗北する」と警告していたが、
日本はすでに秒読みだ。
日刊ゲンダイ
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