【木村智重のMirai Vision】
農業を「未来産業」に育てよう
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100326/mca1003260504006-n1.htm
4月から、鳩山政権のバラマキ政策の代表とも言える、農家への「戸別所得補償」制度が始まります。これは簡単に言うと、100万円のコストをかけて作ったコメが60万円でしか売れなかったとき、政府が農家に40万円を埋め合わせるという補助金制度です。2010年度は5600億円の税金がつぎ込まれますが、これは農村票目当ての選挙対策にすぎません。
自民党政権下でも長年にわたり、減反政策やコメの価格維持などによって農家を手厚く保護した結果、農業の衰退を招きました。政府が保護した業界、業種はみな弱くなるという法則通りです。
全国の約200万戸の稲作農家のうち、実際に稲作で生計を立てているのは8万戸にすぎず、残りはサラリーマン給与などの農業外の所得に依存し、しかも都市で働く同年代よりも所得水準が高いそうです。ある専門家はこれを「偽装農家」と呼んでいます。
日本の農業人口の6割は65歳以上という超高齢化が進み、「耕作放棄地」が全国で合わせて39万ヘクタール、埼玉県の面積に匹敵する広さに及んでいます。この現実は、農業に若い人が魅力や将来性を感じていないことを示しています。もっと多くの人が集まり、農地を有効活用して、富を生み出す農業を実現しなければいけません
◆自由化こそ農業再生の道
その実現のために必要なのが、農業の「自由化」です。現在は、農家しか農地を所有できず、農地の転用や売買も厳しく制限されています。こうした規制を緩和・撤廃して、新たな「農地解放」を断行する必要があります。米国ではインターネット上に農地の広さや値段を明示して購入を呼びかけるサイトがありますが、それぐらいの大胆な改革が求められます。
個人や株式会社を農業に自由に参入させたり、やる気のある農村部の若手農家を支援する制度を整えたりしていけば、切磋琢磨(せっさたくま)が始まって農業全体が活性化していきます。経営の上手な個人や企業に農地が集まって大規模化が進み、雇用も拡大します。
零細農家の側も企業に雇ってもらったり、地主として農地を貸し出せる選択肢が広がれば、安定した収入が得られます。このように農業に競争原理を持ち込めば、国の補助金に頼らずに、企業家精神を持った人、やる気のある人が農業に集まり、農地を有効活用する動きが加速していくはずです。
◆日本が世界を食べさせる
一方で、今の日本の農業には強みもあります。稲作は単位面積当たりの収穫量では世界有数ですし、日本産のコメが中国では3倍の高値で取引され、福岡県産のイチゴ「あまおう」が香港では国内の2倍(1000円前後)、モスクワでは1パック7000~8000円で売られているといいます。農業の自由化を推し進めていけば、高付加価値の農産物が続々と登場するでしょう。実際、オレンジや牛肉の輸入自由化により、逆に日本のみかんや牛肉は高付加価値化し、競争力を持ってきました。
いま地球の人口は100億人に向かって増え続け、このままいけば近い将来、食糧危機が訪れるのは間違いありません。国内ではビルの中でコメなどをつくる「植物工場」の開発が行われています。この分野に投資を集めて技術革新を進めていけば、生産性が飛躍的に高まり、農作物を輸出して、世界を「食べさせる」ことも可能です。今後、人類が共存していくためにも、農業を「未来産業」に育てていかなければいけないのです。
幸福実現党 党首 木村智重氏
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