浮雲

音頭に合わせ雷鳴を轟かせても
リヴィエラに風は立たなかった
先駆の功名を期待しなかったら
幸せな結末は訪れたのだろうか

◆追悼／大瀧泳一◆

手を翻せば雲となり手を覆せば雨となる

手を借りて手を砕いても
手を反されてしまったら
焼いた手は汚すしかなく
擦った手は煩わしくなる

カエデの丘

赤や橙に彩られた絨毯に寝そべると
想い出を想い出のままにしたくなる
才能を発揮する場を探していたのに
隠棲したい自分に誘われそうになる


～鍔山英次写真集『Misty Morning』からのイメージ詩～

一輪の花

輪にならなければ纏まらず
輪にならなければ進まない
緩みきった輪を締め直して
また一輪の花を咲かせたい

一人の青年

走り出した始発電車
とても近いやさしい寝顔
思わず強く抱きしめたら
ひとりが怖くなった

（松井五郎×池田政典）