詩「あるかないかの心音」/作・石川勝敏
浅い眠りから目覚めるとき
言葉にならない声を発した
がーあーがあ
生きている感じがした
隣で解体工事をしているとき
幻声が消えて
破壊音だけがしていた
ドカーンドカーン
生きている感じがした
多肉植物の一葉が誰かにもぎとられていた
心が破られる音がした
ビリビリビリビリ
生きているんだとわかった
メダカを表で飼っているので
カラスの襲来を耳にしたらば
思わず戸を開けて無事を確認した
おーいおーいおい
生きているんだとわかった
雨にたたれて自転車がひどく汚れていた
軽快な走りを見せた
サーッサーッ
生きているんだとわかった
私は同性愛者だのに
なんらの男性を見たり聞いたりしても
電話が切れてるように
何も感じなくなっていた
ツゥーツゥーツゥー
死んでるような気がする