【山形の風習「年間三隣亡」 住宅着工戸数が激減 4年ぶり来年該当「行政も危機感持って」】
建築行事を避けた方が良いとする暦注の一つ、三隣亡(さんりんぼう)の風習が住宅着工戸数を押し下げるという現象が県内で起きている。元々大安や仏滅のように日ごとの吉凶を表すものだが、山形県では全国で唯一、通年で家を建てることを避ける「年間三隣亡」という慣習があるためだ。日銀山形事務所の植林茂所長は年間三隣亡の経済面への影響を論文にまとめ、近年この現象がより強まっていることを明らかにした。【安藤龍朗】
「三隣亡」とは
文字通り「その時に建築行事を行うと、自分の家ではなく隣近所で火事などの災いが起きる」という考え方。江戸時代は「三輪宝」と表記した文献があり、明治期以降に普及したようだ。年間三隣亡は寅(とら)、午(うま)、亥(い)の年の立春から翌年の節分までとされる。
「景気の実態と数字が合わないので、最初は数字が間違っていると思った」。10年7月に着任した植林所長は景気に関するデータを調べる中で、県内の新設住宅着工戸数が年間三隣亡の年に大幅に減る現象に気付いた。
直近では10年度が三隣亡年だった。政府の緊急経済対策で住宅エコポイント制度の受け付けが始まり、全国では新設住宅着工戸数(持ち家)が前年度比7・5%増と伸びたのに対し、県内は同29・5%減と大きく落ち込んだ。「山形にいる以上は、どうしてこの現象が起きるのかメカニズムを調べるのが筋だと思った」と植林所長は話す。
調べてみると、年間三隣亡の年に住宅着工が減るのは山形特有の現象だということが見えてきた。1966年度以降12回あった三隣亡年のうち、新設住宅着工戸数(持ち家)が前年度を下回った回数は山形が12回だったのに対して、近隣県(宮城、秋田、福島、新潟)は8~9回。全国の伸び率との差が5ポイント以上下回った回数は山形県が9回、近隣県は2~4回で、景気いかんにかかわらず、三隣亡年の慣習が県内の住宅着工に影響していることがうかがえる結果だった。
また、年間三隣亡の慣習は庄内地方が主な地域という認識もあるが、実は県内全域で浸透していることも判明。さらに、論文の推計では、60~70年代は年間三隣亡の年はそうでない年と比べて、持ち家の住宅着工戸数が10%減少する程度だったが、80~90年代は15~20%程度、2000年以降は20%程度と、減少幅が年を追うごとに広がっていることが分かった。
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