『ヤマノススメ』に登場する天覧山!「やまね酒造天覧山エコツアー」(聖地会議EXPO2022内企画)を開催しました
天覧山はアニメ『ヤマノススメ』に登場する標高196メートルのお手軽な山です。埼玉県飯能市にあります。最寄駅は西武線「飯能駅」。登山口は飯能駅から歩いて20分ほど、バスで7分のところにあります。
駅から近く、低山であることから、『ヤマノススメ』聖地巡礼に訪れるファンのほとんどが登る山といっていいでしょう。飯能市に住む方々にとっても、家族連れで訪れる身近な山でもあります。
聖地会議EXPOで企画したエコツアーは、そんなお手軽で身近な天覧山をガイドの若林福成さんといっしょに2時間ほど動植物を解説しながら散策しましょう、というもの。
『ヤマノススメ』のアニメ放送は2013年からスタートしました。原作マンガがありまして、マンガのストーリーを丁寧にアニメ化しています。主人公の少女たちが登る天覧山は放送がはじまった9年前から多くのファンが訪れています。すこし今更感があるかな、とは思うものの、だからこそ専門家によるエコツアーはアニメ聖地巡礼にとっての新しい発見があるかもしれない。改めて登ってみたい、と考えました。「やまね酒造天覧山エコツアー」はそんな企画です。
ヤマノススメファンにとって新しい(かも)5つの発見!
その1 能仁寺の山門
天覧山の登山口にある能仁寺。その山門は天覧山を聖地巡礼する人なら目にしているはず。もちろん、ひなた、あおいも目にしているはず。裏手に回ったことはありますか? 木柱を見ると、上まで細い傷がたくさんついています。「アライグマの爪痕です。柱のてっぺんまで続いているのがわかるでしょう」と若林さん。アライグマは人間が外国から連れてきた外来生物です。すっかり野生化し、飯能市に住み着いています。「お寺や神社に行ったら木柱を見てください。こうした傷ができていたら、付近にアライグマがいる証拠です。野生動物そのものを見つけることは難しいですが、こうした痕跡から動物の存在を感じることができます」(同)
その2 いのししの堀り跡
天覧山山頂へと向かう道は、途中までアスファルトで舗装されています。その道路脇を見てみましょう。土が荒々しく掘り返されています。昨日の雨の影響でしょうか、泥濘となり小さな水溜まりができています。「イノシシが掘った跡ですね」と若林さん。「イノシシはこうした泥濘を見つけると掘り返して身体を擦り付けます。身体についたマダニや汚れを落とすんです。だから、たくさんのマダニがいます。絶対に触らないでください。とくにお子さんは遊ぼうと手を伸ばしがち。マダニは感染症を媒介し、噛まれると発症します。とても危険なんです」(同)イノシシや鹿が掘り返し、身体を擦り付けた水溜まりは「ヌタ場」といわれています。天覧山の麓にイノシシや鹿など大型の動物が出没している証拠でもあるのです。
その3 さっそく、きのこ
エコツアー前日が雨だったこともあり、山道には多数のきのこが生えていました。安全なきのこ、危険なきのこの見分けかたはベテランでも難しいといいます。ただ、安全なきのこでも「野生のきのこは生命力が強い。お腹を壊す場合があるので、口にしないほうがいい」と若林さん。
また、触っただけで肌がかぶれる毒きのこも多数発見。エコツアー参加者は遠巻きにして通り過ぎます。「参加者の顔ぶれによって毒きのこを説明する場合としない場合があります。やんちゃな子どもたちのなかには、毒きのこと聞くとイタズラ心を働かせて、友だちに擦り付けようとしたり食べさせようとしたりする。命に関わることなので、絶対にやめてほしい。そんな気配を感じる時は、敢えて毒きのこの詳しい説明をせずに触らないことだけを注意してツアーを続けます」(同)
きのこは採取せず、写真を撮るくらいに留めていた方が安全そうです。
その4 カエンタケ
きのこのなかでもとくに注意を要するのが「カエンタケ」。食べれば死に至る可能性があり、触るだけでも皮膚の炎症が起きます。「カエンタケ」は日本各地で発見され、問題になっています。ここ埼玉県飯能市でも複数確認されています。
「カエンタケが発生する場所は、コナラなど広葉樹がナラ枯れによって枯死したところです。飯能の遠くの山々を見渡してください。紅葉の時期ではないのに葉が茶色くなっている箇所がところどころに見えるでしょう。あれがナラ枯れしている木です。そこにカエンタケが発生している可能性があります」
天覧山の遊歩道にも「カエンタケ」を警告する張り紙があります。見かけても絶対に触らないようにしましょう。
▲矢印部分がナラ枯れが予想される箇所
その5 あざみとカマキリ
エコツアーの日は、あざみの花がところどころ咲いていました。若林さんがそのうちのひとつを指さします。そのあざみだけ、特徴的な紫色のぼんぼりが頭を垂れるように咲いています。よく見ると、そこにはカマキリが逆立ちするように止まっていました。「カマキリはあざみの花に引き寄せられる虫を捕食するためにジッとここで待っています。虫は合理的です。下手に動いてはカロリーを使います。それより、こうした罠を仕掛けて獲物をしとめたほうが都合がいいんですね」と若林さん。参加者から、どのくらいカマキリは待っているのか、と質問がありました。「ずっとです(笑)。獲物が来るまでずっと動きません」(同)
まとめ
今回のエコツアーは【「ヤマノススメ」の少女たちが劇中では描かれていなくても、実際は五感で得ていたであろう動植物の息遣いを感じるエコツアー】でした。参加者には『ヤマノススメ』聖地巡礼で天覧山を何度も歩いたファンの方々がいらっしゃいます。「知らないことがたくさんあって面白い」と嬉しいお言葉をいただきました。
マンガやアニメの制作現場では、キャラクターを作るにあたり、考えるべき要素はたくさんあります。しかし、ページ数には限りがあるし、尺数にも限りがある。なにより要素を入れすぎて冗長になってしまえば見る人に飽きられます。だから、すべてを入れるわけにはいきません。制作者は取捨選択をします。要素を削りに削り、磨きに磨いた最終形として、僕らはアニメや漫画を楽しんでいます。
では、削りカスに意味はないのか。
そうではありません。
生き物の排泄物に多くの情報があるように、削りカスにはキャラクター、作品の情報がたくさん含まれている。そして、舞台になった聖地にはその削りカスがそのまま残っている。
カエンタケやイノシシの堀り跡やアライグマの痕跡は劇中には登場しないかもしれませんが、ロケ取材をした制作者は目にしたかもしれません。つまり、『ヤマノススメ』の主人公たちも目にしたかもしれない要素です。そうした要素をひとつひとつ発見することは、あおいやひなた、ここなちゃんがより立体的になり実在感が増すことに繋がるのではないでしょうか。聖地巡礼の魅力とは、そうしたところにあるのかも、と思っています。
(柿崎俊道/「聖地会議EXPO2022」主催)
若林さんと柿崎の対談本が出ました!
聖地会議29 鉄道むすめ「栗橋みなみ」と井上酒店の12年/若林福成
https://marchel.goo.ne.jp/seichikaigi/product/nEQ16HOXshmNgxMPfBcq
ガイドをしてくれた若林さんのプロフィール
若林福成(わかばやしふくなり)
やまね酒造株式会社 エコツアーガイド
立正大学地球環境科学部環境システム学科 エコツアー講師
(若林さんの詳しいプロフィールはこちら)
https://yamaneshuzo.jp/eco-tour/eco-tour-member/
聖地会議EXPO2022 https://www.seichi-kaigi.com/expo2022
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