イギリスの貴族階級を活写したドラマ「ダウントン・アビー」をせっせと見ている日々。
全8シーズンもあって、1シーズンが8話くらいになるのでのんびりやってる時間もござらん中、何とかどうにか追っかけている。
使用人から始まって伯爵やら令嬢やらがうごめく群像劇の中、マギー・スミスの相変わらずな貫禄と、余裕綽々でちょっとトボけた演技が素晴らしい。
しかしこのお方、自分としては「ナイル殺人事件」の時の看護婦の役が一番最高だと思うのですが
どうでしょう。
大御所ベティ・デイビスを相手に、遠慮会釈なしのゴリゴリの振舞い。
主従関係もどこ吹く風のつっけんどんなところが只々痛快だった。
たぶん自分の憶測ですが、この頃を機にマギー・スミスのそれからの役作りの方向性みたいなものが出来上がったんではないでしょうか?
ところで
「ナイル殺人事件」では、もうお一方ぶっ飛びのイギリス人女優が出ていたのを覚えていますか?
後々「ジェシカおばさん」で名を馳せる、あのアンジェラ・ランズベリーです。
こちらの方も、あっと驚く見事な怪演ぶりでした。
役どころは胡散臭い呑んだくれのエロ作家
こんな人いるか?
と誰しもが眉をひそめるほどの、やりたい放題的な傍若無人ぶり。
まさか、ここから巡り巡ってジェシカおばさんへ繋がるなんて、いったい誰が予測出来たであろうか。
補足として、あの"薔薇より美しい”オリビア・ハッセーがその娘役というのも絶妙でした。
1978年「ナイル殺人事件」公開時のあの時は、自分は在野の無知な少年。
だったので別段何も感じることはないものの、今更ながらにふと思うのは、実はこの顔ぶれからしてとんでもないキャスティングの際立つ映画だったんだな、という話です。
はて
マギー・スミスが出ていた映画では
忘れてはならない「眺めのいい部屋」というのも
ありました。
踝が隠れるほどの丈の長いスカートを、ワサワサ言わせながらヴェネツチアの街中を歩き回るあの映画です。
導入のオペラの歌とかヴェネチアのドゥオーモ、イギリスでのピクニックといった、まるでどこを取ってもアートな世界の体現なのに、そんな中で繰り広がる男と女のゴタゴタ話。
しかし、ここでのマギー・スミスはいつもよりは真っ当で大人し目。
変に目立ちもせず何か物足りない気もするが、ほかの登場人物やらに埋没するかのような、存在感を抑えた役に映った。
「ダウントン・アビー」
「ナイル殺人事件」
「眺めのいい部屋」
この映画たちの時代背景は共に20世紀初頭。
実はアガサ・クリスティが若き日々を過ごしていた時代だ。
アガサ・クリスティは貴族階級の出ではないにしても上流階級の生まれ。
自伝などを読んでも、あまりその暮らしぶりや、周りの環境に今一ピンと来る事がなかったのだが、今になってこんな景色を見ていたんだな、と思えて来て感慨深い。
中でも「眺めのいい部屋」あたりの世界観が一番近いんではないかという気がした。
長らく公開出来ず、ちょっとウダウダしていたこのブログ。
決着を待っているうちに、マギー・スミスとオリビア・ハッセーの訃報が届いて、取り急ぎまとめた次第です。