嫌われ亀子の一週間

　ある雨の夜。
　ようやく仕事から家に辿りつき、いつもように颯爽と車庫の電動シャッターのリモコンを押す。
　しかし開かず。
　おいおい。我が家を目の前にして門前払いか？　
　それでもなだめすかして、よたよた開きはじめた車庫にクルマをなんとかおさめたはいいが、今度は意地でも開かなくなってしまった。
　自宅で袋のネズミか・・・？　
　明日は早いというのに、これじゃ遅刻しちゃうよ！
　冬場、シャッターが凍結。遅刻した記憶がよみがえる・・・。
　相手は機械。きっちり仕事をする時はするけど、しないとなったらテコでも動かない。
　念じれば開くというものでもないと諦めて、業者に電話。
　雨の夜。来てくれました業者さん。　
　負荷がかかると安全装置が働いてロックしてしまうということ。
　そういう時は、一度電源を落として、しばらくしてから入れなおせばよい、とのありがたい教え。
　聞いてみれば、なんだそれだけかというようなことでも、もし気づいたのが早朝であったらなら、訳もわからず右往左往。またまた遅刻なんてことに。　
　気づいたのが夜だったのは不幸中の幸いか。

　ある金曜日の晩。
　いつものようにネットに繋げようとしたら繋がりません。
　何度も試してみたがダメ。
　昨日までは繋がってたのにさ～っ！なんでだよ。　

　問．　昨日と今日の違いを述べよ。
　答．　わかりません・・・。さっぱり！

　プロバイダに電話だ。
　ルーターの機種は何で、何というランプが付いているか逐一言ってくれというので、渋々答えてるうちに裏側をみたら、光ファイバーの線の中身が出て、びよよ～んと伸びてるではありませんか。
　「はは～ん。これが原因ではないの？ワトソン君。」
　電話の向こうでは
　「しかしながらホームズさん。ルーターの二重接続が原因では。」
　とのご指摘。
　なんにせよ、この線のびよよん感は尋常ではない！
　寝苦しい夜はベットから降りて床寝することもあるので、威勢余って蹴飛ばしてしまったのかしらんと、かめよこホームズは推理を試みる・・・。
　設置してくれた業者に連絡しようにも、そこは天下のＮＴＴ殿、土日はダメよ・・・なんて、なんともお堅いこと。　
　気づいたのが、金曜の夜というのは皮肉という他ありません。
　念じれば繋がるというものでもないなと、あきらめた。
　ジタバタしたってはじまらない。月曜はずっと先さ！
　
　そこで「嫌われ松子の一生」を読み始めた。
　学校の先生だった松子が、「そういう時、そうじゃないでしょ。松子さん。」的な事がきっかけとなり、失踪（転落？）してしまうのだが、でも、そんな模範解答なら誰でもいえるよ、何もかも見透かしたような陽気なギャングさん達にはみられない、そういう心の裏面がかえって好印象とも。
　
　先日。
　たまたま広げたスポーツ紙の訃報欄に、聞き覚えのある名前が目にとまった。
　「もしや・・・。」「まさか・・・。」
　４９才という年齢。ジャズべーシスト。渡辺貞夫グループに参加などと紹介されていたので、はっきりとはわからなかった。
　家に帰って、角松さんのサイトを見て、「やっぱり。」
　いつも角松さんの傍らでベースを弾いていた青木智仁さんだったのだ。
　亡くなってはじめてその人を振り返るというのは、愚かな世の常だが、コンサートＤＶＤをあらためて観かえしてみたりと・・・。
　いつも角松さんの側に彼がいた。
　「Ｒｅaｌｉｚｅ」の「いつも会えるものと想っていた人さえ　突然会えなくなる　そんなこともある・・・。」なんて歌詞がなんとも・・・。
　
　ご冥福をお祈りします。