私がここ最近変わったなと思うのは、
メンバーから外れた子たちが
非常によくやってくれるチームになった、ということですね。
10年ほど前までは夏のメンバー発表が終われば、
そこから外れた子は寮を出るのが決まりだったんです。
メンバーから外れて気持ちも少し切れているだろうから
彼らは家から通わせるようにしようと。
ところが、私が監督になって3年目の時、
皆が寝静まってからキャプテンが相談に来たんです。
「メンバー発表が終わっても、
3年生全員を寮に残してほしい」と。
私は内心凄く嬉しかったんですが、理由を尋ねると
「監督はいつも、1つのボールに皆が同じ思いになれ、
“一球同心”と言われているのに、
メンバー外の3年生が寮を出たらお互いに溝ができてしまう。
一球同心が本物にならないと思います」
と言ってくれたんですね。
夏のメンバー発表をする時には、
背番号をつけてやれなかった子たちが
ベンチ裏でワンワン泣いているんです。
でも次の日には彼らのほうから
「チームのために何かやらせてほしい」と
自ら言ってきてくれるようになった。
そして打撃投手をしてくれたりするんですが、
私が一番してもらいたいのが相手チームの偵察なんですね。
1、2年生より3年生のほうが野球をよく知っているから、
絶対にいい分析ができる。
ただメンバーから外れた3年生に
それを頼むのは非常に酷なことなんです。
その彼らが「偵察にも行きます」と
自分から言ってくれるようになり、
そこから何かが変わってきた。
3年生の外れた仲間たちがビデオを撮りに行ったとなると、
メンバーもいい加減には見られなくなる。
そうしたことで合宿所自体の雰囲気が変わってきました。
今回の甲子園では、決勝戦が1日雨で流れたんです。
メンバーはその日、室内練習場で練習をしますが、
宿舎に残っている3年生は部屋で寛いでいてもいい。
ところがその彼らが、決勝で当たる光星学院の
一回戦から準決勝までのビデオ4本を全部見直して、
一からデータを取ってくれたんですね。
初めに、負傷した4番の子の話をしましたが、
その代わりに入った子が実は全然打てていなかったんです。
でも分析の結果、ワンストライクツーボールという
カウントになると、8割以上の確率でスライダーを
投げてくるというデータが取れていた。
そして翌日、1イニング目に彼の打席で
そのケースが訪れたんですよね。
私は頭にデータがあったので、
スライダーのサインを出した。
そうしたら彼も「分かってるぞ」という顔をしたんです(笑)。
私もスライダー来い、スライダー来い、と念じていたんですが、
やってきた球が本当にスライダーで、
それを打ったらホームランで……。
だからあれは本当にメンバー以外の子たちが
打たせてくれたホームランで、
スタンドにいる子たちも凄く喜んでいた。
たぶん彼らもスライダー来い、スライダー来い、
と思っていたんでしょうね。
だから試合に出ていない子の力がいかに大切か、
その子たちの力が関わってきた時に、
チームは本当の力を発揮するんだなと改めて感じましたね。
西谷浩一(大阪桐蔭高校硬式野球部監督)
『致知』2012月7月号 より
メンバーから外れた子たちが
非常によくやってくれるチームになった、ということですね。
10年ほど前までは夏のメンバー発表が終われば、
そこから外れた子は寮を出るのが決まりだったんです。
メンバーから外れて気持ちも少し切れているだろうから
彼らは家から通わせるようにしようと。
ところが、私が監督になって3年目の時、
皆が寝静まってからキャプテンが相談に来たんです。
「メンバー発表が終わっても、
3年生全員を寮に残してほしい」と。
私は内心凄く嬉しかったんですが、理由を尋ねると
「監督はいつも、1つのボールに皆が同じ思いになれ、
“一球同心”と言われているのに、
メンバー外の3年生が寮を出たらお互いに溝ができてしまう。
一球同心が本物にならないと思います」
と言ってくれたんですね。
夏のメンバー発表をする時には、
背番号をつけてやれなかった子たちが
ベンチ裏でワンワン泣いているんです。
でも次の日には彼らのほうから
「チームのために何かやらせてほしい」と
自ら言ってきてくれるようになった。
そして打撃投手をしてくれたりするんですが、
私が一番してもらいたいのが相手チームの偵察なんですね。
1、2年生より3年生のほうが野球をよく知っているから、
絶対にいい分析ができる。
ただメンバーから外れた3年生に
それを頼むのは非常に酷なことなんです。
その彼らが「偵察にも行きます」と
自分から言ってくれるようになり、
そこから何かが変わってきた。
3年生の外れた仲間たちがビデオを撮りに行ったとなると、
メンバーもいい加減には見られなくなる。
そうしたことで合宿所自体の雰囲気が変わってきました。
今回の甲子園では、決勝戦が1日雨で流れたんです。
メンバーはその日、室内練習場で練習をしますが、
宿舎に残っている3年生は部屋で寛いでいてもいい。
ところがその彼らが、決勝で当たる光星学院の
一回戦から準決勝までのビデオ4本を全部見直して、
一からデータを取ってくれたんですね。
初めに、負傷した4番の子の話をしましたが、
その代わりに入った子が実は全然打てていなかったんです。
でも分析の結果、ワンストライクツーボールという
カウントになると、8割以上の確率でスライダーを
投げてくるというデータが取れていた。
そして翌日、1イニング目に彼の打席で
そのケースが訪れたんですよね。
私は頭にデータがあったので、
スライダーのサインを出した。
そうしたら彼も「分かってるぞ」という顔をしたんです(笑)。
私もスライダー来い、スライダー来い、と念じていたんですが、
やってきた球が本当にスライダーで、
それを打ったらホームランで……。
だからあれは本当にメンバー以外の子たちが
打たせてくれたホームランで、
スタンドにいる子たちも凄く喜んでいた。
たぶん彼らもスライダー来い、スライダー来い、
と思っていたんでしょうね。
だから試合に出ていない子の力がいかに大切か、
その子たちの力が関わってきた時に、
チームは本当の力を発揮するんだなと改めて感じましたね。
西谷浩一(大阪桐蔭高校硬式野球部監督)
『致知』2012月7月号 より