NPO法人 屋上開発研究会 活動日誌

屋上緑化、屋上利用を推進するNPO法人の日々の活動をご紹介します。

「スカイフロントフォーラム2008」パネルディスカッション質疑応答

2008-05-26 15:31:02 | 広報部会

スカイフロントフォーラム2008「パネルディスカッション質問シート」
【1】和歌山大学准教授 山田宏之様への質問
Q-1.
アオギリなど生育の早い木が鳥の糞によってもたらされるケースがあります。
屋上緑化の部分にアオギリが成育し、それが風害によって倒木する恐れがある場合、どのように対応すべきでしょうか?
A-1.
倒木しても構わない(落下や屋上利用者への危険性あるいは屋上施設は損の   危険性が無い。)ような位置に生えているのであれば、そのまま生育させておいても良いと思います。僅かでも危険性がある場合は早急に伐採すべきです。アオギリのようなものは剪定を行なっても良い樹形が保てないと思われますので、剪定管理で対応するというのは現実的でないように思います。
 Q-2.
自治体で屋上・壁面緑化の助成事業を担当しています。平成19年度は11件の助成を行ないましたが、このうち壁面緑化の助成は1件でした。都市景観の向上には壁面緑化は有効であると考えています。 そこで、何が原因で壁面緑化が進まないとお考えですか?お伺いします。
A-2.
ツタを地面に植えて壁面に這わすような方法であれば、どんな建物でも壁面緑化は出来ますが、日本の建築物を考えた場合、このような工法が相応しい建物は僅かです。お年寄りのなかには、そもそも建物の壁にツタを生やしてはいけない、と頑なに信じ込んでいる人も多いですから、壁面緑化をやろうという欲求が社会全体に低いのかもしれません 。植栽基盤ごと壁面に取り付けるような工法は、デザインの自由度が高く、設置後の管理も容易なことから、様々な建物に適用できますが、非常に高価(概ね20万円/㎡以上)です。これが普及を妨げる最大の原因だと思います。   また、オフィスビルなどで大規模に壁面緑化を行なう場合には、建物側にも様々な条件が 要求されるために、既に建てられている構造物の場合、後から緑化することが困難な場合が多いのです。これが2番目の原因になると思います。
Q-3.
外国の例(特に米国の例)を教えてください。
A-3.
米国の古い屋上緑化の例としては、ニューヨークのトランプタワーのテラス緑化、オークランドミュージアムの人工地盤緑化、同じくオークランドのカイザーセンターの人工地盤緑化などが良く知られています。 イギリスのロンドンには、デリー&トムズ百貨店があり、1938年に作られた屋上庭園が見られます。ドイツではカールスルーエ、カッセルといった街で、数十年前から屋根緑化を行なった建物が多数見られます。

【2】三菱地所株式会社 井上成様への質問
Q-1.
緑化がビオトープのようになると、招かざる客(害鳥、害虫、草への病気等)が心配です。対策についてご教示お願いします。
A-1.
そもそもビオトープとは「生き物が生息する場所」なので、害虫や害鳥を含め、生物を受け入れていく場所として覚悟しなければならないのが原則とは思いますが、ある特定の害虫や害鳥が集まるには、何らかの因果関係があるのが生態系の摂理なので、それを取り除くか、あるいは害虫が集まらないようハーブ系の植物を植える等の工夫を地道にしていくのが対応として考えられます。
Q-2.
大丸有地区に皇居を呼び込み、カルガモが屋上に生まれたらどうしたらよいのでしょうか?
A-2.
カルガモの生育環境に必要なのは、水面ではなく、本来は沼地のような浅瀬です。新鮮な水と浅瀬が必要だとすれば、屋上緑化部分にカルガモが生まれることは少し想定しにくい気がします。生まれればそれはそれで話題性もあるので、生育場所として相応しい環境づくりを検討するとは思いますが、大丸有地区はとにかくビル中心の土地利用なので、余程皇居の水と緑に連続した再開発をしない限りは難しいのではないでしょうか。
Q-3.
「魅せる」緑化から「生産する」緑化というお話がありましたが、行政との連携の中から 貸し菜園のような動きも出てきているのでしょうか?有れば具体的にお話いただけると幸いです。
A-3.
質問にある「行政との連携の中で、家庭菜園の位置づけが変わってきたのか?」については、特にそうではありません。行政的には、屋上緑化の評価は依然としてヒートアイランド現象や地球温暖化対策、あるいは良好な都市景観形成の視点からの評価が中心で、コミュニティー拠点あるいは生物拠点として家庭菜園を評価する動きは無いと言えます。行政ではなく民間が他物件との差別化、集客効果を狙って、いわば経済的な価値を家庭菜園に期待して取り組む事例が出てきているのが実情ではないでしょうか。
Q-4.
井上様は都市に生き物を呼び込むことをどうお考えですか?
A-4.
昨今の環境問題では、地球温暖化防止、CO2排出抑制が議論の中心になっておりますが、例えば環境省が掲げる環境立国戦略では、目指すべき持続可能な社会の実現の為に、低炭素社会、循環型社会と並んで自然共生社会への取り組みが挙げられています。そのなかでは「生物多様性の保全による自然の恵みの享受と継承」が具体の戦略となっておりますが、これは何も農村や郊外に限った話ではなく、都市部においても生物多様性を保全することを妨げるものではないと思います。 昔に比べ、都市部の生き物が減ったと感じるのは小職だけの感覚ではなく、ある年代以上 の共通した印象ではないかと思いますが、治水や道路の舗装化、上水道の整備等都市生活の利便を追求した結果として、生物が生息する緑(森や林、野原)や水面が減った事と無関係ではないはずです。ここ最近は、緑化や水辺の復活が取り組まれる再開発事例も増えてきましたが、そこには ヒートアイランド現象の緩和という視点に加えて、蝶や鳥を呼び込んで都市のアメニティを高めることも狙った取り組みでもあります。 増えれば増えたで問題や課題(例えば鳥インフルエンザなど)が持ち上がる可能性はありますが、都市と郊外あるいは外部との連関をもって都市が閉鎖空間ではない、一定の生態系の中で一定の役割を果たしていくためには、都市に生き物をもう少し復活させる必要があると思っています。
【3】かをり商事株式会社 板倉敬子様への質問
Q-1.
昨年見に行きました。裏側にネットを設置してありましたが、あれは何のためですか? 落ち葉が落ちるからでしょうか?
A-1.
お隣のビルオーナー様の要請によりツタがお隣に乗り移らないようネットで防止しました。壁面にツタを這わせると壁が剥がれると思っておられるようですが、当社のビルは築40年近くになりますが、ツタの影響で壁が剥がれたというような事例はありません。
【4】有限会社豊島屋ビル 木村蓉子様への質問    トーセイ株式会社 藤原宣人様への質問
Q-1.
屋上緑化を行なって最も良かったと思うことは何ですか?
A-1.
豊島屋木村社長:   
豊島屋ビルを今では「幸せになる貸しビル」と銘打って経営しております。人が快適に仕事が出来る空間の提供が私の責務ですから、その考えでどうしても緑化は外せないアイテムです。思った以上の空間を作ることができて良かったですし、考えていた以上のCO2削減もできて「瓢箪から駒」です。
A-1.
トーセイ藤原部長:    
環境に配慮した不動産を提供でき、お客様はじめメディア、行政からもご評価を頂いている点。
Q-2.
メンテ費用を負担に思うことはありますか?
A-2.
豊島屋木村社長:    
プランの段階からメンテ費用は計算していましたので、負担とは考えていません。どうしても辛くなったら自分でやると思います。
A-2.
トーセイ藤原部長:    
自動潅水システムなどローコストのメンテナンス手法を取り入れるようにしているため、現時点大きな負担とはなっていません。
【5】パネリスト全員への質問
Q-1.
皆さまのビルは台風を経験されましたか?結果はどうでしたか?
A-1.
かをり商事板倉社長:    
何度も経験していますが、落ち葉が多い程度で、特に被害が出たようなことはありません。
A-1.
豊島屋木村社長:   
昨夏は2度ほど台風に見舞われましたが、意外なほど被害はなく、落ち葉が多い程度でした。
A-1.
トーセイ藤原部長:    
経験あり。風雨の影響を受けやすい屋上の特性上、多少のメンテナンス(土がこぼれるなど)は必要であるが、想定の範囲であり、通常のメンテナンスでカバーしている。
Q-2.
壁面緑化がなかなか進まない原因は何だと思われますか?
A-2.
和歌山大学山田准教授:
上記参照
A-2.
かをり商事板倉社長:    
皆さん、お金が掛かる、手入れが大変、という先入観があるからではないでしょか?肩に力を入れず、まずやってみることだと思いますよ。
A-2.
豊島屋木村社長:    
水の歩留まりが悪く枯れ易いと聞いておりますし、清潔感がないように誤解している方も いらっしゃるのでは。また、今流行のガラスウオールのビルには全く不向きですし。ビルのデザインがもっと環境にやさしいものに変わっていかないとおかしいと思います。
A-2.
トーセイ藤原部長:    
コストの問題が一番だと思われます。ツタ類などローコストの壁面緑化もあるが、この場合は生育に時間が掛かることがネックになると思われる。


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