「究極の文武両道 2」

　NCAA出身で著名なアスリートを数名あげると、まず一番最初にあがるエリートアスリートは
ミラクル・オン・アイスで印象深い1980年レイクプラシッド五輪でスピードスケート5冠王に輝いた
エリック・ハイデンでしょう。
　彼はスピードスケート引退後に自転車競技のプロとなり大手企業のケロッグ社やゲータレード社
のコマーシャル出演や全米選手権優勝などスター街道を驀進中の矢先、出場したツールドフランス
で事故に遭い競技生活の引退を余儀なくされました。
　その後父の後を追い名門スタンフォード大医学部を卒業して整形外科医になり、現在は
カリフォルニア州立大学デイビス校の助教授をつとめる傍らNBAサクラメント・キングスのチーム
ドクターとして活躍。またチャールズ・バークレイの膝関節の執刀医も務めました。

　余談ですがまだ記憶に新しい2002年ソルトレイク五輪スピードスケート500mでアメリカの
フィッツランドルフが清水宏保を僅差で下して金メダルを獲得しました。国旗を手にウイニング
ランをしている途中でアメリカ医師団の中に入りしばらく抱き合うシーンが見られましたが、
その人物があのエリック・ハイデンであったことに感慨を受けました。


　カルガリー五輪女子フィギュアスケートの銅メダリストで黒人スケーターのデビー・トーマスも
スタンフォード大の機械工学の学位を得て、引退後はノースウェスタン大の医学部に進み
CRドルー大で整形外科医として診療にあたっています。
　彼女はロサンゼルスのワッツ地区（言わずと知れたギャング街）出身にも関わらず、人生の開拓者
という意味で尊敬するアスリートの一人です。


　究極は田口壮が所属するMLBセントルイス・カージナルスのトニー・ラルーサ監督です。
80年代マグワイア、ヘンダーソン、カンセコ、エカーズリーらを率いてアスレチックスの黄金時代
を築いた名将です。一見芸術家のような風貌を持つ彼は何とフロリダ州の弁護士の資格を持っています。


　野球界でもう一人。オールドファンには懐かしい1970年代後半に活躍し、75年プロ野球広島カープ
のリーグ初優勝に貢献したゲイル・ホプキンス（現在ミネソタ州で開業医）はその年のオフ、原爆ドーム
近郊に当時のスター選手らと共にタイムカプセルを埋めました。
　25年経った2000年、掘り起こしたタイムカプセルの中から山本浩二（現監督）さん、衣笠祥雄さん
のサイン入りのバットや当時のユニフォーム。そしてゲイル・ホプキンスのカプセルからはその空気とは
場違いな「神経科学の分子基礎」という題名のとてつもなく分厚い医学書が出てきました。


つづく…