2022年4月、いよいよ球春到来ですね。「みんなでコロナに打ち克とう!」。
ちょうど昨年の春、小学生の息子さんの治療を通じて、ひとりのお父さんと出会いました。その方は、大学野球、都市対抗にも出場した社会人野球経験者。お互いのことを知っていたこともあり、すぐに意気投合したのですが・・ちょっと気になる相談を受けました。
「5年生から新しくチームに入ったからなのか、コーチとして指導させてくれない」
申し訳ないのですが、かなり想像力のないチームだと思います。このような「閉鎖的な考え」はよく耳にしますが、大人同士のマウントの取り合いは、私の中では最も嫌いなことです。シンプルに考えて野球をやる上で、その道のスペシャリストを大切にできない組織はいかがなものか?ハイレベルな野球を経験しているということは、それだけ多くの指導者の下でプレーしていて、指導する上で引き出しの数も半端ではありません。最短で上手くなる方法を知っているのと、野球に対する取り組み方や練習方法のバリエーションなど野球未経験コーチにとって必ずや勉強になるはずです。
ということで、学童野球の指導者であるウチの患者さんたちの意見も踏まえながら、いろいろと総括したいと思います。
相手が小学生ということで誰でも指導できると思っている方が多いのには本当に驚かされます。スポンジのように吸収力が早い年代だからこそ、しっかりとした理論が必要と考えています。持論になりますが「野球未経験のコーチに野球技術は『絶対に』指導できない」でしょう。(※やったことのないスポーツの技術指導を偉そうにできますか?)
学童野球の世界で一番大事なことは、「何であれ、それが子どもたちのためになっているかどうか」。しかし、大半のチームでは、高いレベルのキャリアや野球の経験が「ある・なし」関係なく、在籍年数の長いコーチの方が発言権があるようです。であるからこそ、そこまでの野球経験のあるお父さんはとても貴重。私が監督なら、まず最初に保護者を含め、チーム関係者、選手全員の前でしっかりとそのキャリアを紹介し、すぐにでもチームの戦力にします。野球未経験のコーチには今まで関わってきたスポーツ(バレーボール、サッカーなど)があれば、その競技特性を取り入れてフィジカル面の強化という形でチームのサポート役にまわってもらいます。
では実際に You Tube 見過ぎのお父さんコーチが、一体全体どのように胸を張って打撃指導をしているのか、いくつかの例をリストアップしてみました。そこには成長期における故障のリスクが高いものが・・
1 ステップしたときに曲げた軸足の膝を内側に入れて回転を作る (らしい)
2 筋力をつける上で、重いバットで素振りをする (らしい)
3 ソフトボールなど重いボールを打って飛ばす力をつける (らしい)
4 ステップした足はかかとから着く (らしい)
守備においては・・
1 ランダウンプレーでは走者の足を止めるために偽投をする (らしい)
2 守備範囲を広くするため、捕れないところにノックを打つ
3 打球を怖がらないように、ノックでは大人が力いっぱいの打球を子供に浴びせる
4 捕れなければ罵声 (笑)
5 水分補給なく延々とノックを打ち続け、気がつけば一時間近くノックを打っている。
その他・・
1 野球未経験のコーチほど、声のかけ方を知らない(指示待ち人間を作るだけ)
2 変なプライドがあり、素直に自身をアップデートしようとしない
まだまだ気になったこと・・まずグラブの型を指摘できる指導者がいない。プロでさえ手で転がしたボールに対して入っていく反復練習をしているのに、まともに打てないコーチのノックで守備が上手くなるわけがないです。私は発育発達を踏まえて指導を実践していますが、弱いチームほど伝達力、理解力がなく、アップデートされていない傾向にあります。
↓ 2020年の春、コロナ真っ只中の記事も宜しくお願いします。↓
まあ、各チームには何かポリシーのようなものがあるのでしょうから、どのような指導をしても構いませんが、ひとつだけ全ての学童野球チームに守って欲しいこと。それは水分補給です。障害予防の意味も含めて、給水には全身全霊で神経をとがらせて欲しいです。
我々、専門家の中では「20:20 ルール」が存在します。気温が20度を超えたら20分に一度給水タイムを設けること。「学童野球において肩や肘を壊す理由として何が一番の理由か?」と質問されたら私は、フォームの問題でもなく、投げ過ぎでもなく、筋力不足でもなく、間髪を入れず「脱水」と真っ先に答えます。
「野球が楽しい」
この言葉ひとつ取っても、意味合いが二つあると思います。低学年であれば、お友達と野球を通じて、何がなんだか分からないけどワイワイと『楽しむ』。高学年であれば、カラダの成長と共に自身の走るスピード、強いボールが投げられるようになり、遠くへ飛ばせる力が日々つくことを実感していく。各自それらを技術に結びつけて野球が上手くなっていくプロセス、そしてチームの勝利に貢献していく『楽しみ』。学童野球の選手のみなさんは、これから更にステップアップして「野球を楽しんで」欲しいものです。