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世良ふゆみさんは、
「百瀬しのぶ」さんの名で、
『おくりびと』『奈緒子』『海猿』などの
ノベライズを書かれている実力作家さんです。
百瀬しのぶさんの名で、
弊社からママさんエッセーも出版されています。
世良ふゆみさんの持つスイーツ文庫作品の
累計ダウンロード記録は、未だに破られていません。
『ときめきブラザーズ』は10万文字を超える作品です。
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(チョッと先読み)
サトシに、マキは後ろからそっと抱きついた。
「いいよ、今からゆっくり過ごそう」
「だって、もう八時だよ。九時ごろまでには帰らなきゃだろ?」
「もうちょっと遅くなっても大丈夫だよ」
「まずくない?」
「ううん、いいの。クラスの女の子たちとカラオケってことにしておけば、十時ごろまで平気。遅くなったらアニキたちのうちの誰かが犬の散歩のついでに駅まで迎えに来てくれることになってるし。だからさ」
「ん?」
「今日……いいよ」
マキはさらにぎゅっとしがみつき、サトシの細い首筋に唇を寄せた。ソファに体を投げ出していたサトシの体が、ぴくんと健全に反応したことがわかる。
「じゃあ、オレの部屋、行く?」
「うん」
ふたりで、恋人つなぎをしてサトシの部屋へ移動する。
ベッドに座り、サトシがキスしてくれるのを待っていると、ちょっと困ったような顔で近づいてきて、いつものようにやさしくついばむような長いキスをしてくれた。
「サトシは、キスがじょうずだね」
唇をはなしたときに、吐息まじりに言ってみた。
「誰かと比較してる?」
「ううん、サトシがはじめてだもん。あたしにとっては、全部サトシがはじめてだよ」
「オレも、こっから先ははじめて」
サトシは照れたようにそう言った。
「ウソ?」
「ウソじゃないよ。オレ、童貞だし、実はどうしたらいいのか、よくわかってない」
「そうなんだ」
「でもさ」
「うん」
「乱暴にして、いい?」
サトシは真剣な瞳で尋ねてきた。
「どしたの?」
「なんか、オレ……」
そう言いながら、マキを押し倒してめちゃくちゃにキスをしてきた。制服のスカートが、しわくちゃになったらイヤだな。ちらっと頭をかすめたけど、じきにそんなことどうでもよくなった。
セーラー服をまくりあげ、いつのまにかスカートのファスナーを下ろし、
「女の子の下着って、可愛いね」
一瞬やさしく笑いながらもさっさとはぎとり、自分もいつのまにか裸になってふとんにくるまりながら、いきなり、貫いてきた。
「マキ、マキ……」
サトシは仰向けにしたマキの両手首をぎゅっとつかみながら何度も何度も、打ちつけてくる。
そして苦しそうに短くうめき声を上げ、マキの体から離れた途端に、サトシが放出したものがお腹と胸に広がっていくのを感じた。
「ごめん、マキ。痛かった?」
「ううん、大丈夫」
ちょっと痛かったけど……と思いながら目を開けると、マキの横に正座をしながら、サトシが泣いていた。
「どうしたの、サトシ」
「オレ……居場所がない」
「どうしてそんなこと言うの?」
「オレにはマキしかいない」
「うん、そうだよ。あたしがいるよ」
マキは両手を伸ばし、サトシの頭を抱きしめた。
「マキとふたりでいたい」
サトシは赤ん坊のようにマキの胸の先をついばんでいる。
「うん、あたしだってサトシとふたりでいたいよ」
くすぐったさと、足の先まで電流が走るような不思議な感覚に襲われながら、マキは言った。
「でもマキには、居場所があるじゃん。すげえあったかい家族がいてさ。お兄さんたちにも大切にされてるし」
「そうかな。でもあたし、自分の家族、好きじゃない。なんかあたしだけ浮いてる気がするんだ。小さい頃から思ってた。あたしひとりだけ、家族の中で違うなって。あ、ううん、二番目のアニキもちょっと変わってるけど、とにかく両親と、圭兄ィと、ノゾはあたしのことなんか何もわかってない」
「そっかな」
長い時間をかけて胸にキスを続けるサトシがまた、ピンとみなぎっているのが、マキの腿に伝わってくる。
「ねえ、サトシ。あたしのこと、めちゃくちゃに壊していいよ」
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お楽しみに。
編集部