さて、月が満ちて、
エリサベトは男の子を産んだ。
近所の人々や親類は、
主がエリサベトを大いに慈しまれたと聞いて喜び合った。
八日目に、
その子に割礼を施すために来た人々は、
父の名を取ってザカリアと名付けようとした。
ところが、母は、
「いいえ、名はヨハネとしなければなりません」
と言った。
しかし人々は、
「あなたの親類にはそういう名の付いた人はだれもいない」
と言い、父親に、
「この子に何と名を付けたいか」
と手振りで尋ねた。
父親は字を書く板を出させて、
「この子の名はヨハネ」
と書いたので、
人々は皆驚いた。
(luke1)
天使から「いつくしみ深い」という名を与えられた
この赤ん坊は、長ずるに及んで
首を切られて、
その首は盆に載せられましたが、
その物語を、小説にしたのは、
現代の小説の書き方の模範を
全世界の小説を書く人に示した
フローベールでした。
19世紀の小説家フローベール以降、
20世紀、21世紀の、小説家の多くが、
意識するしないに拘らず、
彼の影響のもとに小説を書き続けています。
もちろん、貴方も、
小説を書いている人ならば。
(つづく)
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サロメのダンスの起源―フローベール・モロー・マラルメ・ワイルド | |
大鐘 敦子 | |
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