天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

アフォガート ラブ

2017-03-12 20:54:59 | ショート ショート
かわいい君を好きになるんじゃなかった。私はため息をついてしまう。

冬の夜ふけ。二人は小リスのように睦みあって、くっつきあって眠る。そんな時、私は綿菓子にくるまれているような気分になる。甘くて、溶けてしまいそうなピンク色の雲。

なぜ君は私を選んだのだろう。聞いたら、君はふわふわと笑って、それでもちゃんと答えてくれる。それは、わかっているんだ。

けれど、私は尋ねない。なんだか、聞いたら、魔法が溶けてしまいそうだから。(意地悪な言い方をすると、私の君への幻想が壊れてしまうということかな。)

こんならちもない、ひねくれた考えの私は、もちろん、君よりうんと年上だ。

私の夜の眠りは浅い。悲しい夢のつなぎ目のたびに、目を覚ましてしまう。ハッと目を開けると、隣には、規則正しい寝息をたてた君がいる。滑らかな肌。長いまつげ。私は、ちょっと憎らしくなって、君の鼻を軽くつまむ。それでも、君は起きないんだから。

そう。繰り返し見るのは、君を失ってしまう夢。かきむしるような苦しみと、ささくれた虚しさで目が覚めるんだ。

いつかは訪れるだろう別れ。(永遠に続くなんて思うほど、若くない私。)私は、君を潰したくない。そこまで、執着したくない。だって、それは、せっかく仲良くなった二人を汚してしまうから。

でも、

別れの時、痛みをこらえて、君を手放すことができるのだろうか。

わからない。

蜜月の今、こんなことばかり考えている私は愚かだ。


それだけ、今は幸福だということなのだが。

私は今、アフォガートの海に溺れている。甘いアイスクリームと苦いコーヒーに混じって、浮きつ沈みつしている。

(アフォガートが溺れると言う意味だというのは、言い得て妙だ。)