天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

夕顔

2012-09-24 13:20:13 | 小説
そんなある日、昼休みの出来事だった。昼休みはみんなたいてい、食堂で休憩していた。俺もそこで、弁当を食べていた。そこにふらりと澤部さんがやってきた。
「隣、いい。」
「どうぞ。」
澤部さんは手に持った水筒と赤い包みをテーブルに置いた。赤い包みを開け、弁当を取り出し、のんびりと食べ始めた。俺のほうを見て、おっとりと微笑んだ。
「昨日は、お休みだったよね。」
「あ、実は古典の補習があったんです。俺、古典はすごい苦手で。」
「そうなんだ。」
「そうなんです。俺、古典だけはさっぱりわからなくて。古語の意味とか、動詞の五段階活用とか、覚えればできるものは、解けるんですけど。古典が文章ででてくると、だめなんです。」
「内容がわからないの。」
「そうです。なんて書いてあるか、理解できないんです。主語とかもあんまり書いてなくて、誰が言っていることなのか、やっていることなのか、全然わからないし。最近は、古典の文章見るだけで、眠くなりますね。」
「ものすごい古典アレルギーだね。そっか。なるほど。」
澤部さんはうなずいた後、腕組みをしてちょっと考えていた。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿