天路歴程

日々、思うこと、感じたことを詩に表現していきたいと思っています。
なにか感じていただけるとうれしいです。

地上三センチの浮遊

2013-05-16 19:49:47 | エッセイ
「ちゃんと構える」
昔、昔、剣道を習っていました。一番最初に習うのは「構え」でした。打ち込む前の、打ち込まれる前の、相手と対峙する姿勢です。基本的な「構え」は相手の喉元ぐらいに竹刀を構える「中段の構え」です。これは、攻撃にも守りにも適した構えです。足は右足を前、左足を後ろ、左足は踵を少し浮かしています。(すり足で移動し、打ち込む時には飛び込むので、動きやすいように、踵を浮かしているのです。)両足の幅は拳一個分開けます。足の前後の幅はだいたい50センチぐらいでしょうか。竹刀はつばに近いほうが右手、左手はより手前に持ち、おへその前で竹刀を構えます。左手で握り、右手は添えるだけです。脇は閉めすぎず、開けすぎず、(卵が落ちないぐらいと教えてもらったような気がします。)竹刀を構えます。おへそに力を入れ、背筋を伸ばします。これを全部しようと思うと、とてもしんどいです。力を入れすぎても駄目、抜きすぎても駄目。きちんと構えるには、ずっと集中していないとできません。気が抜けるとたちまち何かが落ちてしまうのです。子供の頃、最初の最初、構えの練習は大嫌いでした。微動だにせず、ずっと「中段の構え」をさせられて、左肩が下がってるだの、脇が緩みすぎだの、足が開きすぎだの、注意を受けていました。しかも、なかなか及第点がもらえず、教えてもらっても、どう直していいのかわからないまま、ずっと構えるのはつらいことでした。ただ、技を教えてもらって、試合に出るようになると、きちんと構えることの大切さがわかってきます。攻撃する時のスピードも、相手の攻撃をかわすためのフットワークも、ちゃんとした構えから生まれるのです。しかも、体力がなくなり、しんどくなればなるほど、ちゃんと構えることは難しくなってくるのです。基本を疎かにしてしまうと、後でしっぺ返しをくらってしまうのです。

これは、剣道だけのことではなく、他の武道やスポーツのことだけでもありません。最初はつらくても、きっちりバランスを取って、立つこと。それができるようになれば、どんな足場の悪いところでも、バランスを崩すことなく立てるようになるでしょう。これは、心身ともに言えることだと思います。生き抜くためにとても大事なことのような気がします。ちゃんと構えることは難しく、それゆえに、ちゃんと構えることを意識するのが大事なのでしょう。もちろん達人になれば、どんな状況でもきちんと構えるのでしょうが。そうなるのは遠い道のりです。凡人である私は、ため息をついたり、うんざりしたりするのです。それでも腐らず、諦めず、「ちゃんと構える」努力をしていけたらいいなと思うのです。

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