燈子の部屋

さまざまなことをシリアスかつコミカルかつエッセイ風に(?)綴る独り言的日記サイトです

鬼門の家   其の参「逆流」

2004-07-30 00:00:00 | 日々つれづれ
下着ドロに誘拐未遂(決め付け)と立て続けにやられて意気消沈のわたし。
特に「枯山水事件」は、それまでわたしは慎重だと思い込んでいただけに、
物凄くショックなことであった。
そしてわたしはもう二度と同じ轍は踏むまいと心に堅く誓った。

やがて、埼玉で最初の冬が訪れた。
神奈川の暖かい海辺で育った身には、その寒さが骨身に凍みた。
だが、そんな感慨に耽る間もなく、とんでもないことが起きた。

ある日のこと。
いつものようにトイレを流したわたしは、次の瞬間、目を覆いたくなった。

水が流れていかない!

まるで悪夢を見ているようだった。
吸い込まれていくはずの水がどんどん上がり、
やがてあっさりと溢れて床に流れ出したのだ。
流れ出した水は当然の如くフローリングの下へと入っていく。

「どどどどうしよう?!」

母もわたしもパニックである。

「とにかく業者さんを呼ばなくちゃ!」

その日は業者のお陰でとにかく収まった。
フローリングには上から新聞紙を置いてなんとか水を吸わせた。
ふう、やれやれだ。

ところが翌日。
勤務中に母から悲鳴に近い電話がかかってきた。

「大変だよ!
 また水が溢れて、今度は台所が水浸しだよ!
 流しで水を使うと下から出てくるんだよ!」

うっそぉ~!

帰宅すると、我が家は床上浸水間近の状態!
なんと、歩くたびにフローリングがふかふかしている!
こ、これはまずい!

再び業者登場。今度は流し台の下も調べている。そのうち外に出てしまった。

やがて、業者に呼ばれて母とわたしは外に出た。
下水の蓋が開けられ、中を覗けるようになっている。
業者が説明しながら指差すほうを覗き込むと、
なんと、屋内の下水管と屋外の下水管(本管に繋がる支流管)がズレている!
信じ難いことに、2本の下水管がうまく噛み合っておらず、
そのズレた部分にトイレットペーパーの固まりが引っ掛かっていた。
つまり、これは…

欠陥工事じゃないかーーー!

道理で入居前から壁紙にカビが生えていたわけだ。
コバエも日増しに多くなっていたし、不思議に思っていたのよね。
1階とはいえ、どうしてこんなに湿気が多いのか。
そのすべてがこの欠陥工事のせいだったのね。
入居以来、知らないうちに下水管は少しずつ詰まっていき、
とうとうそれが限界を超えたというわけだ。
こうなってしまったからには仕方がない。
応急工事をするにしても、今は道具も時間も足りないというので、
その日はひとまずどこかのビジネスホテルに泊まることにした。
そろそろ出かけようというとき、追い討ちをかけるように雪が降り始めた。
そんな中を荷物を持ってとぼとぼ歩くなんて、まったく情けない気分。

翌日、雪はやんでいた。
家に戻ると暗澹たる気持ちになった。いったいこれからどうすればいいのか。
とりあえず会社に休みの連絡を入れて、業者の応急工事を待った。
その間、トイレに行きたくなると、わざわざ近所のスーパーまで出かけた。
応急工事の後、怒り心頭で不動産屋へ出向いた。
担当者は平謝りしたが、彼に謝ってもらってもしようがない。
悪いのは工事を請け負った業者のほうだ。
今ならここで引き下がることはしないが、当時はまだ交渉力がなかったので、
敷金礼金を全額返してもらうというだけで解約してしまった。

年の瀬だというのに、とんだことになったものだ。
わたしは途方に暮れたが、運送の手配の都合もあるので、大急ぎで次の物件を探した。
…またこのパターンか。
わたしはいつも急いでいて、結局ろくでもない物件を借りてしまう。
将来、自分の家を持つときには、絶対に急がないこと、と心に刻む。
それにしても、次の言葉を言わなかったのはなんとも残念なことをしたと思う。

 
「訴えてやるぅ~!」

 
(言うだけか?)