晩夏の空に
高々と、聳えていた
あの積乱雲も
どんよりとした
長雨の曇り空に
溶け込んでしまって
その在処さえも
今は、分からない
もちろん、積乱雲も
真夏の灼けつく空を
覆い尽くした果てには
雷鳴を、轟かせて
稲光を、走らせ
雨粒を、降らせ始めた
夏の萌え盛る
草木の生命の輝きを
まるで、打ち据えるかのように
叩きつけていた
でも、それは
草木の生命を
灼熱の陽光から
守り、潤し
秋の実りを
育む雨でもあるんだ
だから、その驟雨は
あっと言う間に、過ぎ去り
また、広がっていく
真夏の陽光は
しっとりと、湿って
その降り注ぐ先の
雨粒を宿した
草木の萌える緑を
更に、奥深く
柔らかく、輝かせるのだ
ただ、その
あらゆる生命が
萠え盛っていた季節は
もう、過ぎ去ってしまった
このどんよりと
低く垂れ込めた雲
真夏に、燃えたぎった
太陽の姿は
分厚い雲に
隠されたままだ
もちろん、この暗鬱を
最後の試練として
草木は、みんな
実りを、育んでいて
また、その姿を現した
秋の陽光の下で
澄んでいく冷気の中
その豊かな実りは
改めて、輝く
でも、その実りは
巡っていく生命の
巡ってくる
ひとときの死
その間近な暗示で
萌えた生命の
終わりの証
きっと、そうなんだろう
そして、今
このどんよりとした空
雲間に、澱んだ陽光
その暗鬱なすべてが
季節の巡りと
萌え盛った生命の
その先にある
終わることの不吉
そのことを
予兆しているんだろう