本当に、おとなになる、と言うこと

おまえは、きっと
世の中の、何もかもを
蔑んで、見下していた
そんな生意気な
子どもとして、生きていた
例えば、おまえが
少しは、出来そうなことなら
周りに、おまえ自身より
もっと、よく出来そうな
そんな他人がいたとしても
あんなことなんて
おまえだったら
ちょっと、真面目に
取り組みさえすれば
すぐ出来るようになるさ、とか
そんな風に、思い上がって
でも、何もしなかったんだ
或いは、おまえがまったく

いや、ちょっとでも
出来そうもないことが
あったとしたなら
そんなつまらないこと
やっても、仕方がないよ、と
取り組むことなんて
本音では、ただ出来ないだけ
そう言う、残酷な事実から
ただただ、逃避していた
もちろん、まったく
向き合うことなど
あるはずもない
結局、おまえは
あらゆるすべてを
拒んで、受け入れなかった
そして、何もしなかった
それで、ただ
鬱々としていたけど
心配にもならないし
楽で、良いよなって
ずっと、いつも
そんな風に、生きていた
だから、おまえが
普通に、年齢が来て
かりそめの、おとなとなって
ひとり、生きて行く
そうなってしまった、その時
さあ、一人前に
ひとりで、生きてみろよと
そんな風に、なっても
おまえには、何もない
そのことに、始めて

愕然と、気づかされたんだ
でも、生きる為には
必ず、しなければならない
そんなことは

いくらでもあって
でも、何もやりたくない
いやなんにも、出来ない
そのことと、否応なく
真正面から、向き合わされた
そうなってしまった
そうだよな

だって、おまえ

死ぬと言うことが
何より、嫌いで
とにかく、怖いから
生きて行くしかなくて
でも、生きて行くとなれば
その生きて行くことの
あらゆる、あれこれを
乗り越えなければならない
それも、おまえが
舐め切っていた
ほんのつまらない
瑣末なことかも知れない
そんなあれこれだけど
十分、厄介で、面倒な
そのひとつひとつに
ただ、向き合う
なんとか、乗り越える
そのことを、積み重ねる
それを、当たり前に
していかなければならない
でも、なにひとつ
まともに、出来ないばかりで
あたふた、右往左往で
だから、もちろん
なにやってんだよ、とか
なんだ、おまえは、とか
そんなことさえ

出来ないのか、とか
厳しく、問われ続けて
そして、改めて
さあ、一からやれと
しっかりやれと
厳しく、要求もされてしまった
でも、そのことで
やっと、おまえは
社会に認められ
受け入れられる
そんな、おとなに

ちゃんと、なって行く為の
あらゆる、あれこれに
向き合い、取り組み
乗り越える、その機会を
なんとか、掴んで
やっと、本当の

おとなになることの
そのきっかけを
得たのかも知れない
そうなのかも知れない
それで、始めて
やっと、おまえは
おとなとして
いや、ひととして
歩み始めたのかも知れない…