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日記、日々の想い 

故郷の海、あの春の日…

あの時の、故郷の海は
この、今になってさえ
ふと、脈絡もなく
甦ってくる
なんだったんだろう
奇跡…
だったんだろうか
でも、その奇跡の海で
甦ってくるのは
波打ち際、だけなんだ
それも
みんなで、夢中で
駆け寄った波打ち際
その覗き込んだ
その一瞬
その水辺だけだ
その水辺は
さざなみに
少し、揺れているだけで
透き通っていた
わずが、10cm位だろうけど
確かに、水辺で
その水底の、砂浜が
透けて見えた
間違いなく
色彩を纏った
貝殻が、いくつも
転がって見えた
水底
海底では、なかった
奇跡の、春の日…
故郷の海は
果てしない太平洋に
広く、開けている
そんな湾の
真ん中にあった
緩やかな海岸線だけど
太平洋の波濤は
湾の中央に高まって
海底も、削っている
だから
故郷の浜辺は
いつも、荒れた波が
繰り返し、砕け散り
その波に、さらわれれば
強い離岸流は
人如きなど、たちまちに
沖合いに迄、押し流すのだ
その、少しの沖合は
絶え間ない波濤に
削られ、抉られていて
その深い海底は
ひとなど、たちまちに
呑み込んでしまう…
そんなだった
故郷の海
いつも、屹立して
近づこうとする
自分を
近づけてくれない
そんな海が
生まれてから
あの街を去るまで
いつも、屹立していた
あの海が
あの奇跡の日
一日だけ…
晩春か
初夏か
先生に、連れられて
自分たち、クラス全員
ふいの課外授業だった
先生は、あの海の様子
何となく、予感していたのかな
先を歩いてた先生が
立ち止まった、砂山のてっぺん
叫ぶような歓喜の声で
自分たち、子どもたちを
呼んだような気がする
自分たちは、皆
夢中で、砂山を
駆け上がって、浜辺へと
先を争った
そんな気がする
あの、子どもたちなど
決して、寄せ付けない
故郷の海は
あの奇跡の、一日だけ
水辺迄、自分たちを
誘っていたのだ
透き通っていた…
先生の、少し興奮した声
自分たちは、
物凄く、はしゃいでいて
あの水辺を、覗き
走り回った…
でも、時間は、過ぎる
自分たちを呼ぶ
先生の声
もう、学校へと
帰らなければならない
そんな時間
ふと、気づくと
もう、水際は消えて
波は、立ち始めていた
もうすぐに
きっと、この海は
いつものように
自分たち子どもたちの前に
屹立するのだろう…
あの、この今から
思い返していても
物凄く不思議な
故郷の海の
晩春か、初夏の
奇跡の一日
いや、きっと
一瞬…


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