視線を、巡らせた
その瞬間だ
ローボートのガラス扉
おまえが、映った
映っていた
どうでも、いいよね
そのまま、仰向いて
天井を見つめている
白いクロスの天井
真ん中に、照明
もちろん、点いていない
今は、昼日中
春で、よく晴れた日
暖かいな…
ふと、思いは
戻っていた
あのガラス扉
一瞬、映り込んだおまえ
だから、どうしただけど
つまらないおまえの姿
見慣れていて…
いや、でも
見ないよな、最近
鏡など、ほんの用足し
さっさと、見放す
どこに、おまえが映ろうが
何十年も見慣れた
見飽きた、おまえ
…でも、ないよな
きっと、見ず知らず
そんなかも、知れない
老いさらばえたおまえ
さっぱり、見かけない
いや、見ようとしない
いや、見る気持ちが
起きないだけかな
老いさらばえて
見たくもない、とか
もちろん、見飽きた、ではない
ただ、どうでも良い
興味がないだけ
多分、鏡に映るおまえが
その表情の奥のおまえが
不思議だったんだよな
子どものおまえは
その鏡面に映るおまえ
光の作用だとか
それは、それとして
鏡は、映るものだとか
それは、それとして
そこには、"おまえ"がいた
こいつが、おまえか
いつも、見つめ始めると
そのまま、ずっと、じっと
見つめていた気がする
時々は、おまえの
その表情、その奥底
また、時々には
このおまえは
ひとからは
どう見えるんだろう
…今は、確かに
どうでも良いな…