番狂わせじゃないミラクルだ！

多摩爺の「スポーツ観戦（その５１）」
番狂わせじゃないミラクルだ！

炎天下のなか、お偉いさんも相当に気を遣ったのだろう。
開会式での来賓挨拶が例年の半分（時間）ぐらいだから、驚くほどに短かった今夏の甲子園
試合開始を調整したり、クーリングタイムを設けたりして順調に試合が行われ、
昨日で二回戦が終了し、ベスト１６が出そろった。

昨夜、入社同期（７０歳）の爺さんから、２度目のショートメッセージが送られてきた。
書かれていた内容は、１度目と全く同じで「うおぉぉぉ、勝ったぞぉぉぉ。」である。
これだけ見たら、なんのこっちゃなんだが、私には彼が伝えたいことが良く分かるのだ。
なんと彼は、島根県立大社高校の出身で、硬式野球部のＯＢなのである。

延長タイブレークで、大社高校が勝った瞬間は、
私もけっこう興奮してしまったので、
速攻で「見てたよ。凄いね。オメデトー！」と、ショートメッセージで返信しておいた。

好投手を擁して、優勝候補と評判が高かった報徳学園（兵庫代表）を一回戦で破り、
昨日の二回戦では、創成館（長崎代表）を延長タイブレークの末に振り切って、
３２年ぶり９回目の出場で、１０７年ぶりに夏の甲子園２勝目だから、
こりゃやっぱり凄いという言葉以外に・・・　適切な言葉が見つからない。

１ヶ月前には、出雲や松江などで豪雨があり、
出雲大社から日御碕を結ぶ県道が陥没したとの報道を目にしたばかりで、
県都の松江や、出雲には親戚や友人が暮らしているので・・・　気を揉んでいたが、
番狂わせと言ったら、大変に失礼になるが、大社高校のミラクルに地元は沸き返っているだろう。

若かったころ、同期が酒を飲むと話していた、大社高校ＯＢとしての自慢は、
夏の甲子園には、第１回大会から地方大会に皆勤賞で出場していることと、
シンガーソングライターの竹内まりやさんと、同じクラスだったことの二つで、
なんども、なんども、その話しを聞かされていたので・・・　直ぐに彼の顔を思い浮かべていた。

地方に行けば、歴史のある名門校なんだが、
全国的にというか、高校野球の世界では、話題にすら上らない公立高校である。
そんな公立高校にミラクルが起こったのは、今春から金属バットが低反発になったことが、
多大な影響を及ぼしているといっても、過言じゃないだろう。

飛距離が５～６メートル落ちるといわれる、低反発のバットから放たれた打球が、
昨秋までは、外野手の頭上をゆうに越えていたのに、
今春からは、外野手が差し出すグラブに収まるようになったのである。

極論をいえば・・・　いままでは強豪私学を相手から、番狂わせの金星を挙げるとしたら、
エース投手が、生涯に一度あるかないかぐらいの快投で得点を許さず、
数本のヒットか、相手のエラーで挙げた、虎の子の１点を守り抜くしかなかったはずだ。

野球というスポーツは、ピンチの後にチャンス有りなんて云われるように、
流れが大きく影響して勝敗を左右することから、
幸運なヒットや、思いがけないエラー、想定外の誤審が、試合の流れを変えることが多々ある。

そこにもってきて春夏の甲子園大会は、全国ネットでテレビ中継されており、
プレッシャーも相当なものになると捉えれば、
甲子園に棲みついてる意地悪な魔物が悪さをし、勝敗を分けることがあっても不思議ではない。

今春の金属バットルールの変更は、有力選手を集める私学の優位性に一石を投じ、
甲子園のみならず、高校野球に棲みつく魔物の出番を増やしてしまい、
強豪校と公立校との間にあった、大きな距離を一気に縮めてしまったようだ。

とはいえ、佐賀や徳島のように強豪私学がなく、公立が優位な地域を除けば、
東京や大阪などの都会では、練習環境に圧倒的な差があり、如何ともし難いものの、
環境が整った地域で、地元のシニアの子どもたちが、強豪私学にリクルートされてなければ、
想定外のミラクルを起こす可能性を秘めており、注目に値すると思っている。

今大会の大社（島根）がまさにそれで、
島根大会では、甲子園常連の強豪私学（開星、石見智翠館）を連破しており、
栃木代表の石橋に至っては、全国制覇を何度か果たしたことがある作新学院を破ってるんだから、
ミラクルという表現さえも・・・　もはや失礼なのかもしれない。

さて、夏の甲子園は・・・　いよいよ今日から３回戦に入る。
勝てばベスト８だから、なんとなくテッペンも見えてくる。

一難去ってまた一難という例えが、適切かどうか分からないが、
欲が出てくるころだし、疲れも溜まっているだろう。
両親の故郷でもある島根代表の大社高校には、
無欲で、自然体で、もう一踏ん張りしてくれることを願ってやまない。

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第１０６回　全国高等学校野球選手権大会　［阪神甲子園球場］

一回戦　　８月１１日（日）
大社　　　（島根）２００　０００　１００　＝　３
報徳学園　（兵庫）０００　０００　００１　＝　１

二回戦　　８月１５日（木）
大社　　　（島根）０００　０１０　０２０　２　＝　５　延長タイブレーク
創成館　　（長崎）００１　００２　０００　１　＝　４

三回戦　　８月１７日（土）
早稲田実（西東京）０００　００１　１００　００　＝　２　延長タイブレーク
大社　　　（島根）１００　０００　００１　０１　＝　３

準々決勝　８月１９日（月）
神村学園（鹿児島）０１０　１１０　４１０　＝　８
大社　　　（島根）１００　１００　０００　＝　２