静けさとのんびり

のほほんとした日常!

R2.11.19(木)「ある日の子猫」Vol.1

2020-11-19 12:28:04 | 日記
20才の時だった。僕は東中野に住んでいた。といってもそこは友達の部屋。1ヶ月ほど田舎に帰るという友達がその間使ってていいと言われしばらく居候することにした。
僕は大学をドロップアウトし日々バンド活動に掛け暮れていた。そのライブ活動は夜が中心。終わると仲の良いメンバーと深夜営業の店に行き飲み明かす。これが日常だった。

ある日、新宿三丁目から朝帰りで帰ってくると、アパートの傍に黒・グレー・白の三色たてじま模様のかわいいトラネコがか細い声で鳴いていた。思わず近くに寄って抱き上げた。全く怖がらない。更にすりすりしてくる。顔を舐めてきた。うわあお、たまらない。

ただただ好きという一心で部屋に連れ帰った。
その日は、可愛いこの子猫ちゃんに僕の酒臭い息をたっぷり吹きかけ、布団の中に招き入れいつのまにか寝てしまった。ああ、幸せ。こんな思いをするのは初めて。

目が覚めると子猫ちゃんは丸い洗面器の中に入って寝ていた。幸せ気分が満喫だ。
既に午後になっていた。お腹が空いた。冷蔵庫を開けるとソーセージがあった。それを包丁で切ってその切れ端をあげた。小さな口を開けむしゃむしゃ食べた。お皿に水を汲んであげると小さな舌を出しそれもおいしそうに舐めた。食べ物も水もきれいになくなった。

その後しばらく子猫と遊んでいた。やがて子猫は飽きてうつらうつらし始めた。それから布団の上にあがって丸くなった。
僕の出かける時間が近づいていた。ギターは店に置きっぱなし。持ち物なし。もっと子猫と一緒にいたい。ずっとずっと一緒にいたい。
切り刻んだソーセージとパンの切れ端を置き水を注いでおいた。起きたらこれを見つけ食べるだろう。
またあとで会える。「じゃまたね、バイバイ」寝ている猫の鼻頭に唇をあて部屋を出た。



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