梅と桜、それは春の訪れを私たちに告げてくれる。
今年は梅を見に、水戸の偕楽園へ行って来た。水戸の偕楽園では梅まつりが開催されていた(今年は2022年は3月1日から3月21日までの開催)。
水戸の偕楽園の成り立ちは、江戸幕末、第15代将軍徳川慶喜公の実父である徳川斉昭公が、1842年、自身が43歳のときに大衆の教育施設として造設したのが始まりという。今からざっと180年も前のことだ。
梅の花の美しさもさることながら、梅の木の幹や枝の美しさも目を引く。長い年月をかけて、大きく捻りを生じ、時には空洞すらある。その生命力には驚かされるものがあった。
気になって梅について調べてみた。
ウメとは
ウメとは、バラ科サクラ属の落葉高木で、中国大陸から3世紀の終わり頃に渡来したと言われている。
古代から梅にはさまざまな効能があることが知られており、薬や保存食として用いられてきた。日本最古の歌集『万葉集』には梅を題材とした和歌が数多くあり、桜を歌ったものよりも多いという。
梅の木の成長
梅の木は地植えしてから3〜4年で結実する。しかし梅は自分の花粉で結実する品種が少なく、他の品種の花粉から受粉する必要がある。そのため別の品種の梅と一緒に育ててあげるとよい。
適切な土壌環境で、剪定や害虫対策など手入れを入念に行なった場合、梅の木は200年以上の樹齢になるという。現存する木で樹齢が分かっているものは、伊達政宗が朝鮮から持ち帰った梅の木で樹齢は220年、300年以上と言われているものがある。
幹のねじれと空洞
梅に木に限らず、ねじれて来る性質をもつ樹木がある。ザクロ、ソメイヨシノ、トチノキ、マツ類は遺伝子的にもねじれの性質があることが知られており、どちらの方向にねじれるかはそのときの幹の傾斜や風向きによっても変わる。偕楽園の梅も長い年月をかけてねじれを形成してきたのだろう。
梅の木は樹皮の少し内側に形成層があり、そのわずかな隙間を通じて栄養分や水を体内に巡らせている。したがって樹皮さえあれば、中が空洞であっても枝を出したり花や葉を出し生き延びることができる。
偕楽園の梅には、体幹にダイナミックにも大きな空洞のあるねじれ梅もみられたが、こういった空洞は、剪定での切り口からの虫がついたり、柔らかな部分から生じる腐りがもととなり出来てしまうそうだ。
剪定は木を長く保つためにも必要な手入れなので、避けられないことだろう。しかし、樹木の内側は古い形成層の跡であり、そこが腐ってしまっても、木は生き続けることができる。
もっとも、腐った部分を適切に治療したり、倒れないように、支柱で支えてあげる必要があるが、なんとも力強い生命力だろうか。
葉より先に咲く花
寒い冬越し、古木にも一斉に美しいな花を咲かせてくれる梅。サクラの木同様、葉が出る前に花が全開に咲く姿は、私たちの心を強く打つ。
この開花については、梅や桜の木は植物ホルモンによって調整されていることが知られている。
春の開花のあと、緑いっぱいに生い茂る葉から沢山の栄養分を取り込んだあと、夏に花芽ができる。花芽は秋には休眠に入り越冬芽という状態になる。葉は全て落葉する。
休眠を誘導するのは休眠ホルモン(アブシシン酸)と言われている。冬の低温を経験する間にこのアブシシン酸は減少し、今度は花芽を誘導する花成ホルモン(フロリゲン)が茎の先端まで運ばれ、その結果開花する。日照時間や気温から正確な開花時期を予想できるのはこの仕組みのおかげだ。
幹から突然生える花
梅や桜の樹木の幹から飛び出すように花が咲いているのを見たことがあるだろう。
樹木の成長に伴い、伸びた茎から葉芽ができ、さらに枝を伸ばして行くが、ある時期になると茎の先端で葉芽ができる代わりに花芽形成に切り替わる。この成長の途中で茎がストップしていたりして葉にも花にもならずに潜伏していた芽が、何かの拍子に成長を再開し枝になったり花になったりする。これが幹から直接花が咲く姿となって現れる。
さいごに
自然環境が大きく変動すると、この美しい梅や桜もこれまでと同じようには生きて行けず、春ではない時期に咲いてしまったり、成長できない環境になってしまうこともある。180年目前に水戸の斉昭公が残した教育施設である偕楽園で、その問いを問われたように感じた。
閲覧いただき、ありがとうございました。