![]() | 「旅立ちの日に」の奇蹟 ~いくつもの”卒業”を経て、今響く歌声~ダイヤモンド社このアイテムの詳細を見る |
(「卒業式の裏話(3)」からの続きです。)
・・・・・・その時,私は自分の体の異変に気付いた。
右目からは止めどなく涙が流れ始めている。
明らかに,子ども達の姿に感動している。
ところが,左側の顔半分が笑おうとしている。
「しょうがないなぁ」
と口に出しそうになる。
右半身は感動に震えたまま,
左半身が
「おまえら,1番ぐらいちゃんと歌えよなぁ。」
と笑っている。
のど元までこみ上げてきているものが,
嗚咽なのか爆笑なのか,
自分でも分からない。
子ども達の歌声は,
既に涙声になっている。
最後までこらえ続けていた責任感の強いB君も,
(約束通り)間奏で泣き始めた。
その続きの「別れの言葉」は全て涙声でボロボロ。
幼児のように絶叫している子さえいる。
2曲目『旅立ちの日に』では
1年生まで泣き始めた。
「目をそらしてはいけない。」
子ども達の姿をしっかりと見詰めつつ,
自分の異変と戦っているうちに,
あっと言う間に全てが終わった。
最後の校歌斉唱。
クラスの子ども達のほとんど全てが泣いている。
涙に崩れながらも堂々と退場していく子ども達の後ろ姿を見詰めながら,
「昨夜の予感は間違っていなかった。
やっぱり,彼らはやってくれた。」
と,ようやく,
ポケットからハンカチを取り出すタイミングを見つけた。
「頭を冷やしてから教室へ戻ろう」
と言う学年主任と一旦職員室へ。
冷静に考えてみた。
今から思えば,あの時,
極限状態で私の体は2つに分かれてしまったのかもしれない。
「よくやった」と人間として素直に感動する左脳。
「それじゃダメだよ」と担任としての評価を続ける右脳。
感情と理性に支配されたそれぞれの半身が
別々に行動した結果が「涙と笑い」だったのであろう。
実に不思議な経験をさせてもらった。
教室に戻って,
そのままの言葉を子ども達に贈った。
「合唱としては最低の出来。
でも,
卒業式の歌としては最高の出来。」
そして,もちろん,
「卒業おめでとうございます。
よくぞ私を振り切って行ってくれました。」
と・・・・・・。
・・・・・・一応,今回の「卒業式四部作」は完結です。
但し,後日談があるので,
それは追い追いに書かせて頂きます。
お付き合いありがとうございました
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