氷川きよしについて ★ by とねりこ

藤枝しぐれ☆中年渡世人の魅力

作詞の松岡弘一さんはもともと小説家でいらしたからか、歌詞の中にしっかりとしたストーリーが見えてくるような気がします。

2年前の「最上の船頭」の時も、一時の激情にかられて若い男女が駆け落ちしたのはいいけれど、酒田に出てから大きな船で上方(かみがた)へでも行くのだろうか、駆け落ち者では仕事にも家にもたちまち困ってしまうだろうなあ・・・と二人の行く末を心配したものでした。

「藤枝しぐれ」。懐いた子どもが5歳ぐらいだとしたら、主人公の子どもは生きていれば10歳ぐらいでしょうか。だとすれば主人公はとうに30を過ぎているでしょう。

この時代はちょっとしたことで子どもはすぐに命を落としたといいます。おそらく奥さんと子どもと続けざまに失って、生きていく甲斐を失って故郷を捨て渡世人に身を落としたのかもしれません。

 

「箱根八里の半次郎」「大井追っかけ音次郎」と、Kiiちゃんの股旅ものの魅力はその突き抜けるような明るい高音にありました。

今でもこの2曲はコンサートで必ず歌ってくれるので、特に最初のフレーズで高音を張り上げる「音次郎」はKiiちゃんの喉ちゃんのコンディションを推し量るバロメーターになっています。

「藤枝しぐれ」はそれに比べると、ずっと低音で物語が展開していきます。まるで淡々と独り言をつぶやいているようです。

でも、この孤独なもう若くはない渡世人がどんな人生を歩んできたか、「鬼だぞ」と凄んで見せても突き放しきれない本性の優しさがにじみ出てしまう、そんなものがすべて見えてくるようなKiiちゃんの低音の響きなのです。

 

Kiiちゃんはこれまでに股旅ものを沢山歌ってきましたし、明るいノリのよい曲だけでなく「月太郎笠」や「番場の忠太郎」のようなマイナーな曲もありました。

でもやはりどの曲にも若さがあったと思います。

「藤枝しぐれ」をKiiちゃんは若い声では歌っていません。そこに今までにない深いしみじみとした魅力を感じるのです。これはKiiちゃんの股旅の新境地だったのではないかと。

Kiiちゃんがこの先も股旅ものを歌ってくれるなら、これからもこんな魅力的な歌声を聴くことができるのになあ・・・

もう叶わない望みなのでしょうか。

コメント一覧

百日紅
「明るい演歌」は氷川演歌の真髄でしたが、年相応の股旅演歌が歌えるようになった氷川きよしくん、感慨深いです。 
数年前に「限ラジ」に「旅の酒」をリクエストした事があります。この歌を歌うにはちょっと若過ぎるのではないか、と書いたせいかボツになりました。 「….苦さを飲み干す ぐい呑みに 何も聞かずに 酌してくれる 店のオヤジの 無口さが やけに沁みるよ 旅の酒」 「…つまらぬ愚痴など こぼさない そんな強さが 男に有れば 酒に強くは なるまいに…」 きよしくん38歳の時の作品です。 今歌詞を見てもグッとくる 森坂ともさん作詞、水森英夫作曲、その年の「作詞大賞」に選ばれてないというのが不思議なくらいの名作。 コンサートで今のKiiさんで聴きたい一曲です。 
活動再開後も演歌、シャンソン等も歌ってくれないと本当に勿体ない才能ですよね。他の歌手達が喉から手が出るほど欲しい「心」を見事に表現出来る唯一無二の歌手なんですから。
izu
発売日が、ちょうど新歌舞伎座公演に行く日だったので残念ながら藤枝しぐれは聴いていませんでした。2部のコンサートの時のkiiちゃんからの紹介を聴いて、気になっていました。すると、なんと帰りの新幹線で限ラジをradikoを聴いていたら、かけてくださっていました。しかも、ほぼフルコーラスで。歌詞を聴いていたら、涙が出て来ました。ストーリーがある、情景が目に浮かぶ素敵な曲でした。コンサートの時、22歳から演歌を歌って来て、22歳の頃のようには歌えないけど、44歳の今の歌を届けたいとおっしゃっていました。長い歌手人生を生きてきた、色々な事を背負い、乗り越え、切り開いてきたkiiちゃんの魅力ある歌声で、新しい境地の演歌、楽しみにしています。そして、休業後は、様々なジャンルの歌を聞かせてとらえること、楽しみにしています。
サキ
昔見たシャランQ主演のつんくさんが演歌歌手で陣内孝則さんがロック歌手を演じた「演歌の花道」という映画がありました。劇中で陣内さんが演歌とは何かと聞きつんくさんが心だと答え、それに対して陣内さんが、じゃあロックとはハートだと返したシーン思い出しました。心とハート 演歌もロックも心で歌うものなら、きいちゃんの心に響く歌に出会えた時にはきっとジャンル関係無く歌ってくれると期待してます。
せり
「藤枝しぐれ」大人の股旅、そうですよね、kiiさんもそんな歌を歌える年頃になったんですね、感慨深いです。izuさんの昨日のアフタートークでkiiさんの求心力や抱えてきたものの大きさのお話があったようですが今までのkiiさんの歌手人生が氷川きよしという人間を大きく育ててくれたのかもしれません。これからも様々な経験を経ていつかさらに深い情感あふれる「股旅もの」を歌って下さる時がやってくるかもしれませんよ、なんか歌いたくなっちゃったとかいってね。なんたって意外性のお方ですから。
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