カバー曲3曲目は、三橋美智也さんの大ヒット曲「おんな船頭唄」。
https://columbia.jp/artist-info/hikawa/discography/COCP-32843-4.html
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/20527/
私がKiina沼にドップリはまるきっかけとなった運命の一曲と言っても過言ではありません。制限なしに語っていいよと言われたら三日三晩語れる自信あります。
何度もお話しさせていただきましたが、Kiinaとの出逢いは2005年3月の新宿コマ劇場「きよしの石松売り出す 初恋道中」をうっかり観に行ったことから始まりました。
初めての演歌歌手の劇場公演。一度目の観覧は休憩時間にファン同士のいさかいを目撃して(ちょっとフィールドが違うかも…)と思ったものの、千穐楽のお芝居の途中でいきなり号泣した「きよしくん」を見て、「なんなんだ、この人は」と。しかも2部のコンサートになったら、めちゃくちゃ歌が上手い!
その時はまだ「初恋列車」を収録したアルバムは出ていなくて、初めて買ったのが「演歌名曲コレクション4〜番場の忠太郎〜」でした。
父が懐メロのLPレコードを沢山持っていたので、DISC2に収められていたのはどれも聴き馴染んだ曲です。三橋美智也さんの「おんな船頭唄」も知っていました。
KiinaのCDから流れる「おんな船頭唄」の2番「所詮かなわぬ 縁の恋が」の「か」の音に惹きつけられました。
なんて綺麗な「か」なんだろう!今まで生きてきて耳にした中で一番綺麗な「か」の音だ、と思いました。
Kiinaは、日常会話は博多弁だと聞いていますが、歌になるととにかく発音が綺麗で正確です。どんな曲でも、はっきりと歌詞が聴き取れます。
その中でも特に「あ」行の発音が明瞭で美しい。「あ」の中に「い」が混じったり「え」が混じったりするプロ歌手の何と多いことか!
とにかく、CDから聴こえてきた「かなわぬ」の「か」の響きに私は強烈に惹きつけられ、「この人の歌声をこれからも聴いていたい」と思いました。
「おんな船頭唄」は大ヒット曲ですので、多くの歌上手の方がカバーされていますが、誰の歌声を聴いてもKiinaのようには惹きつけられません。
上手い下手の問題ではなく、相性の問題、感性に響くかどうかなのでしょうね。
さて、この曲の歌詞の内容ですが。
子どもの頃から聴き馴染んではいましたが、そして女の船頭さんが恋に敗れた歌なんだろうとはぼんやり想像していましたが、あちこち分からない箇所が。
一番意味不明だったのが「利根で生まれて 十三、七つ」で始まる3番でしたが、最近になってようやく答えがみつかりました。
わらべ唄に「お月さん幾つ 十三、七つ」というのがあります。これは十三夜の七つどき(午後4時頃)〜早い時刻に出る月のことで、若いという意味になるそうですね。
このおんな船頭さんは、月に向かって「あたしも同じ歳。おんなじひとりぼっち」と語りかけているんでしょう。
1番の歌詞にある「ざんざら真菰」は、Kiinaの「大利根ながれ月」に松井先生が引用されていましたね。このフレーズだけで歌の舞台が利根川だと分かります。
相手の男にとっては行きずりの、誠意のない一夜限りの恋。船頭さんはまだ若くて相手の真意が見抜けなかったのでしょう。
しみじみと寂しい歌です。
上手さに自信のある歌手が思い入れたっぷりに歌うと、聴き手の側が想像を巡らして情感を噛みしめる余地が残りません。
Kiinaの張りのある中にほんのり哀感が滲む歌声、特に最後の「つなぐ舟」の低音がたまらなく好きです。
今あらためて聴いても、「この人を好きになって追いかけたのは間違いじゃなかった!」と確信できる大事な一曲です。
千葉県の佐原に「おんな船頭唄」の歌碑があるそうですね。
佐原は江戸の情緒を残した風情ある街だそうですので、いつか行ってみたいと思っています。