アルバムカバー曲5曲めは、北原ミレイさんの「石狩挽歌」です。
Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=5l-XFf50ZGk
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/66482/
なかにし礼さんの特別な思い入れが詰まった作品ですね。
ニシンの大漁に沸く北海道。一攫千金を狙ったお兄様は借金して船一隻分のニシンを買い占めるけれど、シケですべて無くしてしまう。そんな実体験が反映された歌です。
お兄様はなかにしさんが作詞家として成功を納めた後、様々な事業を興しては潰し、なかにしさんを苦しめたと「兄弟」に詳しく書かれていました。
その最初の起点になったのがニシンの買い付けだったとするなら、複雑な思いでこの詞を綴られたのでしょう。
「海猫(ごめ)」「筒袖(つっぽ)」「ヤン衆」…
聞き手に一度では伝わらなくても、こうした言葉でなくてはニシン漁に沸く石狩地方の熱気と寂れた今を表現出来ないという思いが、なかにし先生にはおありだったのでしょうね。
この歌は、歌い手がどの時点に立って歌っているかで印象が違ってくる気がします。
イントロもメロディーも勇壮だけれども、それは主人公の記憶の中にだけあるまぼろしの賑わいの風景。
藤原定家が「見渡せば 花も紅葉もなかりけり」と歌ったのと同じ二重構造になっているのだと思います。
Kiinaはインタビューで「すごくカッコいい曲」とお話ししていて、実際「玄海船歌」のように勇ましくカッコよく歌い上げていますね。
それはそれでKiinaなりの「石狩挽歌」になっていると思いますけれど。
この4年後にリリースした「櫻」以来、Kiinaはなかにし先生に可愛がっていただくようになりましたが、もし「石狩挽歌」のレコーディングの時になかにし先生から直接お兄様のニシン投機のことや少年時代の体験を聞かせていただいていたら、どんな「石狩挽歌」になっていただろうなぁと、ちょっと思ったりします。