「番場の忠太郎」のカップリングは、同じく長谷川伸さん原作の「一本刀土俵入」をモチーフにした「人情取手宿」です。
https://columbia.jp/artist-info/hikawa/discography/COCA-15678.html
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/20603/
Kiinaは三橋美智也さんの「一本刀土俵入り」を「股旅演歌名曲選Ⅱ」で歌っていますね。
松井先生の歌詞は、聴き手が原作のストーリーを知っている前提で書かれていて、詳しい説明がありません。
駒形の茂兵衛は相撲の親方に暇を出され故郷へ帰る途中の取手宿で、酌婦のお蔦にありったけのお金を渡され「横綱になって土俵入りを見せておくれ」と励まされます。
10年後、結局相撲取りにはなれずやくざに身を落とした茂兵衛が、今度はお蔦の窮地を救うという人情劇です。
お蔦を逃し見送った茂兵衛の
「これが十年前に、櫛、簪、巾着ぐるみ、意見を貰った姐さんに、せめて見て貰う駒形の、しがねえ姿の、横綱の土俵入りでござんす」
というセリフでお芝居の幕が降ります。
私は勘九郎さん時代の故中村勘三郎さんの茂兵衛をテレビで見た記憶があります。
今でも歌舞伎や劇場公演でも大人気の演目ですね。
「瞼の母」〜「番場の忠太郎」と違って悲劇性のない温かな人情劇なので、Kiinaの歌も肩の力を抜いて楽な気持ちで聴けます。
改めて「人情取手宿」の歌詞を読むと、原作の大事な要素はすべて嵌めこんだ上で、何の無理もなく「一本刀土俵入」の世界が表現されていることに、松井先生の見事な職人技を見せられ感嘆するばかりです。