アルバムカバー曲4曲めは、西田佐知子さん「アカシアの雨がやむとき」
Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=fd86fbXRwrs
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/66481/
1960年4月に発売された当初は、別の歌手の別の曲とのカップリングだったそうですが、よく言われるようにこの年1月の日米安保闘争の敗北に傷ついた若者たちに支持されて、異例のロングヒットになりました。
曲の内容は政治色などとはまったく無関係で、恋に破れた女性が雨に打たれながら「このまま死んでしまいたい」と嘆くものなのですが、西田さんの乾いた歌声が醸し出す都会的でどこか諦観したような雰囲気が、闘争の敗北で無力感に苛まれていた若者たちの心を捉えたのでしょう。
この曲の主人公の女性は、愛した人に去られて「死んでしまいたい」と思うほど絶望しているのだけれど、相手に対しては何も求めていません。自分が死んだら魂が鳩になって愛した人を探しにいくだろうと歌うけれど、その感情は自己完結しています。「あなた死んでもいいですか」などと相手に訊いたりはしません。
とても孤独な歌です。
これまで男女を問わず沢山の歌手の方がカバーしていて、私もサブスクで色々聴いてみましたが、上手い下手ではなく一番しっくりきたのは研ナオコさんでした。
この曲の世界観が描く孤独感や諦観を一番自然に表現出来ているのが、研さんだったように思いました。
Kiinaは、水森先生の元で修行していた時に女性のお弟子さん達がレッスンしているのをよく聴いていたそうです。
個人的には2008年のこの時でなく、ちあきなおみさんの「かもめの街」や研ナオコさんの「かもめはかもめ」を歌った現在のKiinaの表現力でもう一度聴いてみたいなと思います。
余談ですが、この曲で歌われている「アカシア」はニセアカシア〜ハリエンジュのことだと言われています。
私の故郷の町には白や薄ピンクの房の大きなニセアカシアが沢山生えていて、花の季節になると甘い香りが町中に漂っていました。
今住んでいる東京の街でも自生したニセアカシアを見かけますが、その花房も色もあまりにみすぼらしくて初めて見た時にはびっくりしたものです。
せめて「アカシアの雨がやむとき」を聴く時には、故郷の町に咲いていた美しいアカシアの花を思い浮かべていたいと思います。