アルバム・カバー曲3曲めは、橋幸夫さんの「沓掛時次郎」です。Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=IXu9KKGWRr0
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/189642/
橋さんの曲は1961年市川雷蔵さん主演の「沓掛時次郎」の主題歌として制作・発表されました。この時橋さんはデビュー2年め、まだ18歳でいらしたというのに、驚くほど完成度の高い歌唱です。
「沓掛時次郎」は長谷川伸さんが1928年に発表した股旅ものの戯曲で、以来何度も舞台化・映画化されてきました。
ひと言でいうと、博徒の男が行きがかり上殺してしまった男の妻子を連れて旅をする物語ですが、舞台は房州から鴻巣→熊谷、さらに高崎宿へ。結局時次郎の故郷である沓掛へ親子を連れて行くことは出来ないまま、愛した人は死んでしまうという悲劇になっています。
この原作を元に1929年に初めて映画化された際に、長谷川伸さんがご自身で作詞をされた「沓掛小唄」という曲が主題歌として制作されました。
その歌詞の中に「淺間三筋の 煙の下で」というフレーズがあります。橋さんの「沓掛時次郎」に同じフレーズが出てくるのは原作者の長谷川伸さんへのオマージュなのかな?と思ったりします。
浅間山の下にある沓掛は、行けども行けどもたどり着けない幻の故郷なのでしょう。
「沓掛小唄」はマイナー調の少し重いしみじみした曲ですが、橋さんの「沓掛時次郎」は明るくさっぱりした曲調になっていますね。雷蔵さんの映画もそんなイメージだったのでしょうか。
そして、Kiinaの歌いっぷりは橋さんよりさらに巻き舌、こぶし満載の明るい「ザ・股旅!」になっています。
Kiinaは今回のレコーディングで初めてこの曲を聴いたそうですので、あるいは原作の「沓掛時次郎」は悲劇として作られていることをご存じなかったかもしれません。
「沓掛時次郎」の映画化は、1966年に加藤泰監督、中村錦之助さん主演で「沓掛時次郎 遊侠一匹」が制作されたのが最後となっています。
股旅映画の傑作と高く評価された作品で、若い時に私もリバイバルを探して東映系映画館に足を運びました。中村錦之助さんの演技の上手さ!雪の高崎宿を三味線を抱えてさすらう池内淳子さんが絵のように美しかったです。
この映画と、やはり錦之助さん主演の「関の弥太っぺ」は今でも手元に持っています。