「心の闇」
温無常の護送中、突然、強い風が吹いてくる。その風がおさまった時、無常の姿は消えていた。
すぐに刑場にいた韓総領に、無常の逃亡が伝えられる。「また怪しい風か、忌々しい」と怒る韓総領。
無常と共に、温如玉は安世耿に感謝する。安世耿が呼んだ六扇門の宇春童が現れると、驚いた無常が「牢獄では、散々、痛めつけてくれたな。足を折られるところだった」と怒りだす。「だが感謝するがいい。春童が私と通じていなければ、そなたは死んでいた」と言う安世耿。
安世耿が「五毒翎教を破滅させた者たちを忘れてはいまいな」と言うと温如玉が「神侯府と六扇門です」と答える。「六扇門はとるに足りぬ。倒すべき敵は神侯府だ」と安世耿が言う。「四大名捕を1人残らず始末します」と言う温如玉。
自分の指示に何でも従うと言った温如玉父子に、安世耿は屍魂丹を差し出す。拒否すれば生きてここを出られないと思った温如玉は、無常と一緒に飲む。
高笑いをした安世耿は「早速、力を借りたい」と言う。そして「孤毒や狼毒に侵された者は。毎月15日に発作を起こすのを知っているな?」と聞く安世耿。温如玉は「はい。私にその者らの狼毒を消せと?」と言う。安世耿は「逆だ。発作を起こさせてくれ。満月の夜に限らず、こちらが望む時に、いつでも」と話す。一線毒という薬草が必要なため、2日待つよう温如玉は言う。
夜。神侯府の前で鉄手が出てくるのを待ち続けていた依依。ようやく出てきた鉄手は依依を見て驚く。
毎日、退屈している依依は「兄さんに会って、気晴らししたくて」と言う。「用がある」と言う鉄手。妹の命日だから、お参りに、と。「私も一緒に行く」と依依は言う。
「なぜ、ここでお参りを?」と依依が鉄手に尋ねる。鉄手は「墓は故郷にあって、容易には行けない。だから毎年、ここで紙銭を燃やして供養してるんだ」と答える。依依は、なぜ亡くなったのか聞く。
鉄手の父は鋳鉄司の役人で、正義漢が強く汚職とは無縁だったが、他人に陥れられ流刑に処されてしまう。幼かった鉄手は妹を連れて逃げ、農村にたどり着き路上で物乞いを。しかし、いつも妹に自分の食べ物をあげていた鉄手の具合が悪くなる。妹は鉄手のために焼餅を盗み、鉄手が食べているところに追いかけてきた男たちが来て妹は連れて行かれる。
「たった1つの焼餅のせいで妹は殺された。俺は妹を守ってやれなかった」と話す鉄手。依依は「子供だもの、何もできなくて当然よ」と慰める。今では四大名捕の1人として活躍してる、天国にいる妹さんも喜んで見てるはずだわ、と。それでも鉄手は「自分が許せないんだ。妹の死は、一生、忘れられない悪夢だ」とつらそうに言う。「あなたが苦しみ続けるのを妹さんは望んでない」と言う依依。
鉄手は依依にお礼を言う。「私を妹にしてくれない?きっと楽しいわよ」と依依が明るく言う。「バカだな、とっくに妹だろ」と言う鉄手。
依依は“本当の妹さんより、あなたを幸せにしてあげる”と思う。
遅い時間になったため、鉄手は依依を近くの宿に泊めることにする。
鉄手が「明日は来るなよ」と言うと「どうして?」と依依が聞く。鉄手は「もう訪ねてくるな。俺のことは忘れたほうがいい」と話す。君は優しくていい子だ、自分の人生を生きろ、きっと幸せになれる、もう会わない、と。そして「宿の帳場に帰りの路銀を預けてある」と言うと、鉄手は部屋を出て行く。
“大事な人が傷つくのは、もう見たくない。俺なんかといても危険なだけだ。君の無事と幸せを願ってる”と鉄手は思う。
冷血の屋敷。離陌が刺繍をしていると瑶花が訪ねて来る。冷血に会う前に「弓場でのこと、2人に代わって謝るわ」と離陌に言う瑶花。離陌は「気にしてません」と返す。
読書をしていた冷血に「まだ起きてるの?」と瑶花が声をかける。
離陌はそっと2人を見て、屋敷を出て行く。
春童が神侯府に潜入する。下男を気絶させ、下男の服に着替える春童。
歩いていた離陌は春童を見かけ“この人、誰かしら”と思うが、そのまま行ってしまう。
冷血の屋敷へ行った春童は、温如玉の薬を入り口付近にまき、血のついた手巾を投げ捨て、その場から離れる。
離陌が外で刺繍をしていると葉児が来る。暗い中で刺繍をしていた離陌に「もしかして想い人がいるんじゃない?」と聞く葉児。恥ずかしそうに「何、言ってるの」と離陌が返すと、葉児が「あなたは理想が高そうだから…四大名捕?」と言う。この色は女物じゃないし、白状して、と。「いつも助けてくれる人に贈るつもりなの。とても手の届かない、雲の上の存在よ。この刺繍で感謝の気持ちが伝わればいいけど」と答える離陌。
葉児が「冷血様ね?」と言うと、離陌は「冗談でしょ」と不快そうな顔をする。「分かったわ、無情様でしょう」と言う葉児。この間も、あなたを守ってくれたと。離陌の様子から当たったことが分かり「もう邪魔しないわ」と言って、葉児は行ってしまう。
しばらくして「冷兄さん、やめて」という瑶花の叫び声が聞こえてくる。離陌が向かうと、発作を起こした冷血が瑶花を襲っていた。そこに無情たちが駆けつける。
無情、追命、鉄手の3人が冷血を抑えようとするが、3人がかりでも冷血にかなわない。そして無情をかばい、離陌が冷血に首をつかまれてしまう。その時、諸葛が来る。「離陌。恐れるな、読心術を使え」と言う諸葛。
離陌は冷血に自分の目を見るよう強く言う。そして一族が殺された時の冷血の様子が見える離陌。離陌は冷血に「つらかったのね。でも憎しみは一生、あなたを苦しめる。復讐の炎は、いつかあなたを焼き尽くす。冷血様、憎しみを捨てて」と語りかける。冷血が離陌の首から手を離す。諸葛はうなずき、無情たちは驚く。意識を失う冷血。
離陌と2人きりで諸葛は話す。「冷血の瞳の奥に何が見えた?」と聞く諸葛。離陌は「残酷な殺戮と、大切な家族の死、深い恨みを背負った重圧。あれは一体、何ですか」と言う。諸葛は「冷血の父親は狼族の王、冷血は狼族の王子なのだ。幼い頃、狼族は滅ぼされた。父は狼の群れに息子を託し、冷血は狼に育てられた。とはいえ人間は決して狼にはなれない。人間として成長しつつあった冷血を、狩りで山に入った朱殿下が、偶然、発見し養子にしたのだ」と話す。
「もののけが出るのは、満月の夜だけでしょう?」と離陌が尋ねる。諸葛は「今夜は満月ではないのに発作が起きた。狼毒が溜まりすぎているのだろう。このままでは、いずれ本当の人狼に」と言う。離陌は「いずれって、いつ?」と聞く。「最悪の場合、三月(みつき)も持たないだろう」と言う諸葛。離陌は「狼毒の発作は、強い憎しみが原因では?憎しみが強いほど毒も強まり、行き場を失って暴れ出すのです。心に抱いた憎しみを捨てれば狼毒を抑制できる」と言う。諸葛は「狼族を滅ぼされた恨みは、容易には消せまい」とうつむく。そこに追命が来る。
「庭に下男が倒れていました」と報告する追命。何者かが侵入し、下男の服を奪ったのです、と。離陌は不審な男のことを思い出す。さらに来た鉄手が「冷血の部屋の外で見つけました」と手巾を諸葛に渡し「血のにおいだ」と言う諸葛。追命が「血のにおいが発作を引き起こした?」と聞く。
諸葛は「おそらく、そうだろう」と言う。
離陌は「言うべきかどうか迷ったのですが…」と話す。騒ぎの直前、冷血様の部屋の前で、怪しい男を見ました、と。鉄手が「もっと早く言え」と怒ったように言う。読心術で人の心が読めるようになりました、だけど…、例えば私は姫統領に嫌われています、でも思い込みかもしれない、この間みたいに心を読み間違えてるのかも、自分の考えを軽々しく口にするのが怖いんです、と言う離陌。諸葛は「母親が読心術を教えなかった理由が、だんだん分かってきたようだな」と言う。
春童が安世耿に「神侯府に潜入してきました。温如玉の粉をまいた途端、冷血が発作を起こし、みるみるうちに狼の姿になりました」と報告する。「効果てきめんだな。それで冷血の血は?」と聞く安世耿。春童は「発作を起こすと冷血の力が何倍にも増すのです。3人がかりでも押さえきれぬほどに。とても手が出せませんでした」と答える。安世耿は「温如玉の薬が有効なら、冷血の血が手に入る日も遠くはなさそうだ」と鏡を見ながら笑う。
諸葛が冷血の様子を見に、屋敷を訪れる。そばにいた追命が、諸葛が寝ている冷血を見ている間に「離陌をここ留めてよかったな。無口な男とおしゃべりな女、お似合いだ」と小声で無情に話す。「今の話は…」と諸葛は言うが、追命はごまかしてしまう。
蝴蝶は気持ちが沈んでいる瑶花を心配する。瑶花が「冷兄さんの狼毒が強まってる」と話すと「楚離陌に発作を抑える力があったなんて」と言う海棠。蝴蝶も海棠も、発作が起きるたびに離陌の株が上がる、と許せないが、瑶花は「冷兄さんが救われるなら、それが一番」と言う。冷兄さんの幸せだけが私の望みだと。
寝台で寝ている冷血に向かい「そんな重荷を抱えていたこと、ちっとも知らなかった。長い間、恨みと憎しみを抑えつけてきたのね。強い怒りに押しつぶされそうになりながら、傷があらわになるのを恐れて自分を隠し、冷淡なふりをした。本当は自分の弱さを見られるのが怖かっただけ。そうでしょ?」と話しかける離陌。でも、このままじゃ、あなたはダメになる、憎しみに飲み込まれ復讐の鬼と化してしまうわ、人の心を失った野獣に姿を替え二度と元に戻れなくなる、と。
離陌が去った後、冷血は目を開ける。
琴を弾きながら、狼になった冷血と、その時の離陌を思い返す瑶花。
追命は水玉堂にいる冷血に会いにいく。「危うく殺されそうになったぞ」と冗談を言う追命。冷血は「離陌はどうした?」と聞く。「心配するな、どこもケガしてないよ。あの子が読心術を使って、お前を落ち着かせたんだ。命がけでお前を救ってくれたんだぞ」と話した追命は「実は危なかったのは姫さんだ。必死でお前を救おうとしてた。行ってやれ」と言う。
会いにきてくれた冷血に驚く瑶花。「昨夜は悪かったな」と冷血が謝ると、瑶花は「私は何ともない。心配なのはあなたよ。このままでは、きっと…」と言う。「何とか抑える」と返す冷血。
屋敷に戻った冷血は“敵を討てぬ間に、どんどん狼毒が強まっている。もう時間がない”と思う。そこに離陌が朝食を持ってくる。
離陌は、昨夜、部屋の前に怪しい男がいたことを冷血に話す。顔は忘れたと。
冷血が「疲れたろ、休んでろ」と言う。いつもと違う冷血の言葉に、離陌は聞き返す。
怒った公主が神侯府に来る。離陌を連れてこさせ「今日はお前を尋問しに来たの」と言う公主。心当たりのない離陌に、公主は「とぼけないで、冷兄様に抱きついたそうね。私を差し置いて」と言う。慌てて「誤解です」と離陌が言うと、公主は冷血から離すため、女官として皇宮へ来なさいと言い出す。無理やり離陌が連れて行かれそうになった時、追命と冷血が来る。
公主は「狼毒のこと聞いたわ。皇宮で侍医に治療してもらいましょう」と冷血に話す。冷血は「もう大丈夫です。ご心配なく」と言う。そんな冷血の前で両手を広げて立ち「兄様に色目を使わないで」と言う公主。離陌は「使ってません」と言う。公主が追命に「あの女が兄さまを誘惑するの。なんとかしてよ」と言い、話を合わせて「その通り。あの女は俺だけじゃなく、誰にでも色目を使います。諸葛様に頼んで追い出してもらいましょう。次は馬の世話係に」と言う冷血。
嫌がる離陌が捕吏2人に連れて行かれ、公主は喜ぶ。
公主から見えない場所に来ると、捕吏たちが離陌を離してくれる。冷血の作戦だと思い、ホッとしながら歩いていた離陌。そんな離陌の前に蝴蝶と海棠が現れる。
離陌の肩が蝴蝶にぶつかり、難癖をつけてくる蝴蝶。離陌は謝って行こうとするが、眠り薬のついた手巾を口と鼻に押し付けられてしまう。
ーつづくー
鉄手にも悲しい過去が(;д;)
自分のために妹が焼餅を盗んだことも、そのせいで亡くなったこともつらいよね。
でも、妹のためにも鉄手には幸せになってほしい!!
明るい依依が救ってくれるといいなって思う。
冷血が再び狼に(✽ ゚д゚ ✽)
読心術でどうやって冷血を救うことができるんだろう?と思っていたけど、こういうことだったのね。
公主も相変わらずでヾ(・ω・`;)ノ
離陌が皇宮へ連れて行かれなくて良かった!!
でも、また何か言いそうだし、今後が心配。
蝴蝶と海棠が再び離陌に何かしようとしてる…。
悪人を捕まえるのが捕吏なのに、自分たちがこんなことをしてて(o´д`o)=3
2人が何かをするたびに、かえって瑶花の立場が悪くなると思うんだけど。
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離陌が読心術を扱えるようになっていて
本当によかったです。
安世耿の策で悪化しないようになればよいですけれど。。。
離陌にとっては一難去って、また一難。。。
次回はどうなるのでしょうか。