最終同意から1週間後、ついに入院となりました。
場所は馬出の大学病院。
俺の家からは電車と徒歩で30分程度の場所です。
※ネットから
交通費は、全額出ます。
入院手続きを済ませると、4人部屋に通されました。
手術は、翌日です。
入院自体が、久しぶりなので、ワクワクする部分もあったのですが、ベッドを割り当てると、あとは暇です。
だって、周りは皆さん、体調が悪くて入っているのに、俺は逆に、体調が絶好調だからドナーをやっているわけです。
はぁ、暇だ・・・と思っていたところ、女性の看護師さんが僕に声をかけてくださいました。
「もし、お暇なら、無菌ルームの見学をしてみますか?」
おぉ、ぜひぜひ。
無菌ルームという部屋について、金八先生を見てイメージがあった僕は、とても興味がわきました。
金八先生では、先生の息子さんが白血病になり、無菌室で語り合うシーンがあったからです。
後はセカチューというドラマでしょうか?(長澤まさみさんのやつ)
その時の無菌室は、大きなビニール袋の中にベッドがあり、その中で、マスクと白衣、帽子を付けた状態で面談をするというシーンでした。
で、僕が連れていかれた無菌室は、まず、入り口で風を体中に当てられ、その後、帽子を白衣を付けるのですが、そこまで厳重でもなく、こんなものでいいのか?と拍子抜けしました。
しかし、それは誤解でした。
入室した先には、畳2畳くらいの広さの、透明なアクリルような箱が並んでおり、その中に子供たちがいました。
3方が透明アクリルで、1方には穴がたくさん空いた金属製の壁がありました。
箱の内側には電話機の受話器が取り付けられており、外側にも受話器がありました。
「この中が、本当の無菌室です。穴が開いている壁から、常に風が流れていて、空気が滞留していないようになっています。
この中にいる子のほとんどは、生まれつきの白血病で、ずーっと、この箱の中で暮らしています。
お母さんに抱きしめたもらった記憶もなく、親子の会話は電話機の受話器を通して行われます。
この子たちは全員、自分に合う骨髄ドナーの方が現れるのを、待っているのです。」
・・・え、この子たち、ずっとここで過ごしているの??
こんなに狭い箱の中で、ずっと暮らしているの??
そんな風に思っていたところ、女性の方が近づいてきました。
30代前半の、とてもお綺麗な方でした。(余談ですが何故かトゥイムポが固くなりましたw)
看護師さんと挨拶をすると、看護師さんが僕を、
「こちら、こんど骨髄を提供されるドナーの方です。」
と紹介をしてくださいました。
「あ、どうも。」
と会釈をする僕。
すると、女性の方は、僕の目を見てこう言うのです。
「この度は、ドナーになっていただきありがとうございます。私の子供は、ちょうど先週、骨髄移植の手術を受けました。骨髄液が届いたとき、家族一度、本当に涙を流しながら、『命が届いた!!』と喜びました。それだけ、待ち望んでいたのです。おかげ様で、子供の手術は無事に成功し、良い方向に進んでいます。私たちは、お医者様から、ドナーの方が自分の命のリスクを冒してまで、骨髄を提供してくださっているということを、聞いているのですが、自分の子供に骨髄を提供してくれたその方には、直接お会いできない決まりになっています。でも、心からお礼が言いたいのです。あなたが提供された骨髄を受け取った患者さんの家族に代わり、私からお礼を言わせてください。本当に、ありがとうございます。」
そして、両手で握手しました。
これまで、何となく「良いことをしている」と思ってやってきたことが、ここに来て、一気に実感がわき、おぉぉ、本当に俺は、人の命を助けるのかぁ!!!
と、とても嬉しくなったのを覚えています。
俺の人生、後にも先にも、これほどまでに(お綺麗な)人から感謝されたことは、無い気がします。
心を温かくしつつ、一方で、箱の中にいる子供たちを思い出しつつ、初めて病院のベットで眠りにおちた、入院1日目でした。
入院2日目。
朝、起きて顔を洗って。
歯を磨き
天気が良いです。
絶好?の手術日よりです。
生きて帰れるといいな!
なんて思ったりしながら、手術を待ちます。
骨髄移植の手術は、腰のあたりに2本の、お箸くらいの太さの針を骨髄に刺します。(´・ᯅ・`)
一度、刺した場所からは少量の骨髄液しか取れないため、皮膚に刺した穴はそのままに、抜くことはなく、角度を変えながら骨髄に100か所以上の穴をあけながら骨髄液をとります。
シェークを飲むときとか、フタにストローを指した後、角度を変えながら飲むと思いますが、あれみたいなものです。
当然起きていたら激痛(拷問レベルw)で耐えられるわけもなく、手術は、全身麻酔で寝ている間に終わります。
ですが、この寝ている間、というのが気になりまして、どうやって寝るのか?と医師に聞いたところ、睡眠ガスを吸うと5秒で寝るそうです。
え?5秒で寝る?
絶対に起きているぞ!!と思って、強い意志を持っていても、ガスを吸ったら5秒で寝る?!
そんな、マンガ(ドラえもんののび太じゃあるまいし)の中みたいな世界があるのか!!
ハンカチで口をふさいだら寝ちゃう、みたいな!!
ここはもう、ガスと戦うしかない!
睡眠ガスを吸わされて、30秒たっても起きていて、医師から「起きていますかー?起きていたら手を上げてください―。」という意識確認をされても、ずっと手を上げて、医師から「な、なんて強靭な意思だ!こんなに起きていた患者は初めてだ!!」と言わせたい!!
だって、こちとら他の患者さんと違って、絶好調に健康な人間ですから!
と、睡眠ガスと戦うことを昨夜のうちに決心していた俺は、キリリ( `ー´)ノとした顔で看護師さんが来るのを待ちました。
午前10時頃、看護師さんが来て、僕俺ベッドから、手術室に移動するための移動台の上に移しました。(担架だっけ?ストレッチャーだっけ?)
あの、よく医療系ドラマで「急患です!」ってやっているような、ガラガラと移動するやつです。
手術室に入ること自体、人生はじめてなので、ここから始まる初体験&睡眠ガスとの勝負に、僕はドキドキしました。
手術室に行く前に、看護師さんから導入剤と呼ばれる注射を打たれました。
なんでも、睡眠ガスを効きやすくするための、注射だそうです。
看護師「注射のあとは、ちょっとボーっとしますからねー。」
俺「( 𖥕᎑𖥕 )ギンギン」
左腕の筋肉に注射を打たれ、ものすごく痛かったです。
・・・・・・・・
目が覚めたら、夕日が沈む窓際のベッドの上で、寝てました。
あれ?
手術室は?
睡眠ガスは???
手術室への移動は?ガラガラは??
時刻は夕方16時。
そうです。
俺は、導入剤を打たれたあと、速攻、寝落ちてしまい、寝ている間に手術室へ運ばれ、寝ている状態で睡眠ガスを吸い、寝ている状態で手術が終わって、病室に帰ってきていたのです・・・・。
こうして、俺の骨髄移植の手術は、記憶がないまま終わりました。