夢もまた遠し

夢に対する捉われを捨て、一日一日を真剣に生きていきたい。

PERFECT DAYS を観た

2024-03-07 00:02:21 | 日記

映画『PERFECT DAYS 』を観た。
主人公平山が読んでいた文庫本に、幸田文の『木』というものがあった。僕も読んだばかりの本だ。

その冒頭に「えぞ松の更新」という、とても印象的な一文があって、この文章と平山とを重ね合わせた。
えぞ松の古樹の命が尽きて倒れると、その倒木を苗床にして次の世代のえぞ松が、育ち始める。
だから、若木は倒木の「一直線」をトレースしたように、森の中に現れるのだ。

幸田文はこう言う。

えぞ松は一列一直線一文字に、先祖の倒木のうえに育つ。一とはなんだろう。どう考えたらよかろうか。さぞいろいろな考え方があることだろう。私にはわからない。でも、一つだけ、今度このたびおぼえた。日本の北海道の富良野の林中には、 えぞ松の倒木更新があって、その松たちは真一文字に、すきっと立っているのだ、ということである。なんとかの一つ覚えに心たりている。

平山は毎日毎日ひとつのことを繰り返すように見えるが、それは倒木をトレースするように、若木が芽生えているに過ぎない。倒木はその生を全うしたからこそ、それをトレースするに足る存在なのだ。トレースが一様に見えるとしても、それは倒木が、完璧な一日を終えたからではないか。

「一つとはなんだろう」幸田文は問うけれど、彼女は「一つ」と括ることの、傲慢さを知っている。だから、平山の行動が毎日毎日の繰り返しに見えるのは、そう思うものの傲慢さのしるしなのだ。

そして、そんな理屈をこね回すまでもなく、この映画は何度観ても鑑賞に足りる。


かかりつけ医に聞け

2023-12-26 16:39:40 | 日記

大谷翔平「そこはドクターの方が詳しいのかなと思います。」

水原通訳 “You could probably talk to my doctor about that.”

この“could” が効いているので笑いが起きた。
みんな苦手だった「仮定法過去」。

「できた」のに、現に「やっていない」事実を含意していて、ドクターに聞けばいいのに、こんなところで聞かないで、というニュアンスにもなる。

「かかりつけ医にでも聞いてみれば」というのも随分な意訳だが。


冬の大三角

2023-12-25 17:27:34 | 日記

オリオン座の右肩に当たるべテルギウスがオレンジ色に輝く。優里が「遥か遠く終わらない」と歌った星だ。太陽の何百倍も大きいという1等星は、優里には申し訳ないが、10万年以内に超新星爆発を起こしてその一生を終える。

その左下に見えるのがシリウス。太陽を除けば地球上から見える最も明るい恒星だ。政策集団シリウスなどというものがあったのを知っているのは、50を過ぎた人たちばかりだろう。

シリウスの左上に白く光る1等星がプロキオンだ。この星の名は「犬の前に」というもので、おおいぬ座のシリウスよりも先に昇ってくるため、シリウスがまもなく昇ることを知らせる星の役割を負っていた。大スターの前座とでも言おうか。

しかし、べテルギウスとシリウスとこのプロキオンを結ぶと、冬の南の空に綺麗な三角形が現れる。
プロキオンがグングン昇ると、つられるように冬の大三角もふんわりと夜空に浮き上がって、冬の夜空の主役になる。