提案 ぱこさん 温暖化

2007-06-25 12:25:34 | Weblog
現状、15~50%以上もCO2排出を減らさなければならない中で、(2)のグリーンエネルギーの資源として使えるものは、風力発電、太陽光発電、バイオマス、地熱といったところでしょう。このうち、風力発電と太陽光発電は技術的にも効果の面でも評価が確立しているので、どうやったらもっと使えるかを考えればいいことになります。

では風力や太陽光の利用をどうやって増やせばいいのかというと、もっと設備を作るという「プロダクトアウト」の発想ではうまくいきません。電力の場合、電力供給事業が法的に地域独占になっているために、横浜で言えば東京電力に対する規制や経営方針の範囲を超えて利用することが難しいのです。簡単に言えば、横浜市や市民が風車をつくっても、東京電力がその電気を買ってくれないと、つくった電力が余ってしまいます。ではなぜ東京電力が風車の電気を買いたがらないのかと言えば、コストがかかるからというのが理由ですから、他の発電設備と比べてコストがかかる分を、誰かが負担して、その負担をしてまでグリーンエネルギーを使いたいというニーズが起きれば、利用が進むことになります。つまり、太陽光と風力について言えば、発電設備を作ることより、多少高くてもそのグリーン電力を買ってくれるニーズを起こすことが重要です。

風力や太陽光による電力を使いたいとニーズが起きれば、コスト面や供給先が確保できるので、多くの人が風車や太陽光発電設備を作ろうという動機が生まれ、投資も集まります。すでにこういうグリーン電力設備には、市民出資もたくさん集まる時代なので、コストに見合う価格で買ってくれる人を掘り起こせば、そのぶん利用が進むことになります。

この点に注目すれば、たとえば、市内の家庭に対して、消費電力の15%分のグリーン電力を買いましょうというキャンペーンが成り立てば、議定書の公約が守れることになります。

ざっくりした試算を考えてみます。僕の家では、今月、570kwhの電力消費があり、電気料は13,000円ほどです。このうち15%分、86kwhをグリーン電力でまかなうためには、グリーン電力は、430円ほどです。これは、1kwhあたり5円の風力発電の「電力認証証書」を買ったとそうしていています。電力認証は、電源によって5~15円程度ですが、最大でも1500円程度負担すれば、電力に関しては京都議定書を守れることになります。

電力認証に払った430円は、風力発電の事業者に支払われます。事業者はこの430円分を消費者から受け取るので、86kwh分の電力を、火力発電の電力と同等のコストで電力会社に販売できるようになります(実際には入札)。電力会社は、「高いけどグリーンな電力」はわずかな量しか買いませんが、「火力発電と同じ値段の電力」なら、市場原理に基づいて買い取ります。こうして、従来では利用されなかった量のグリーン電力が利用されるようになるのです。

つまり、電力認証のようなグリーンエネルギーを消費者や消費企業が直接購入できるしくみを使って、ニーズを起こせば、設備の方は自動的に増えていくのですね。あとは、どこに立地させればよいかという点になり、この部分は市場原理に基づいて最適な風況地や、太陽光パネルを設置しやすい場所が選ばれていけばいいということになります。

ちなみに、430円は電気料金13,000円と比べて、コストにして3%から10%分、余分に払えば、京都議定書に対応できることになります。このコストを払う人がどのぐらいいるか、ということになりますが、これはまた別の切り口で考えます。

同じように、バイオマスを利用するには主に暖房設備やボイラーを交換してからということになり、電力認証を買うより手軽さに欠けます。バイオマス利用の利用上限の設定などは、まだまだ未知の部分があるので、こちらはやや時間をかけて中期的に取り組んでいくことになりそうですが、いずれにせよ、CO2排出削減のために、何らかの負担が必要になると言うことには代わりがありません。とはいえ、バイオマスの利用は地域エネルギーの循環が起こせるし、農業や森林の整備という別のメリットも出てきますから、こういうメリット享受のためのコスト(森林整備事業や農業振興の補助金など)とセットにすることで、コスト負担を減らすことができます。

省エネはどうでしょうか。省エネは、実はもっとも可能性が高い方法です。基本的なメカニズムは、省エネ対応の設備に交換し、それによってエネルギー消費を落とすというしくみです。設備の交換に初期投資が必要ですが、消費が落ちることで光熱費が減り、いずれもとが取れます。このもとが取れる年限が長いか短いかが問題になるのですが、このタイプの場合、金融的な方法で回収年限の問題はある程度クリアできます。要するに、金融機関に利息の棒引きという形で負担してもらうという方法です。コスト負担という意味では、省エネが一番少なくてすみます。地熱の利用は、今のところ、エアコンの室外機の放熱を地面下でおこなうというものが一番期待されているので、これは省エネ設備の一部と考えていいでしょう。

ここまでが、エネルギー源そのものをグリーン化する方法と、使用量を減らす方法のメカニズムになります。いずれにせよ、コストがかかる(高低はあるにせよ)ことには代わりがなく、そのコストをどうやって負担するかが次の焦点になります。

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コストの負担は、大きく分けると法規制などによって強制的に負担させる方法と、目標を決めて自主的に取り組んでもらう方法に分かれます。全社の強制の方が楽で確実ではありますが、一歩間違えると市民の不満ばかりがたまりかねません。

僕自身は、自主的に取り組む方法を基本として、かつ、楽しみながら、あるいはいい気持ちになりながら、気持ちよく負担できる方法が作れるかどうかがポイントだと思っています。

とはいえ、まずは直接的に訴える方法にチャレンジするのがよいと思います。上記のように「あなたの家(会社)の消費エネルギーのうち15%をグリーン化してください、方法はかんたん、お金を支払うだけです」というもの。これはいわば「罪滅ぼし意識に訴える方法」です。僕のように、クルマに乗る人にとっては、乗らずにすますのも難しいなあと思うことが多いわけです。そこで、「乗るなら、そのぶん経済的に負担することで、CO2を減らしてください」「方法はかんたんです」と言われれば、その負担が重すぎなければ、負担したくなります。この方法で負担する人がどの程度のわりあいになるかはわかりませんが、米国でもこの方法は実施されていて、思っているよりはずっと関心が高いと言われています。この「罪滅ぼししましょう」のメッセージは、企業やNPOなどが出すより、行政が出したほうが信頼感が高くなり、効果が大きいでしょう。

次に、負担はしてもらうけれど、楽しみながら、気持ちよく負担してもらうという方法です。たとえば、マイカーを使うよりバスや電車を使うほうが環境にいいのですが、マイカーをやめてバスを利用すると宣言した人には、何かおトクをつけるという方法があります。バス運賃を安くするのでは、もともとクルマを持っていない人と比べて不公平になりそうなので、もっと名誉的なもの、たとえば、グリーン宣言済みバスカード(パスモやsuica)を発行するという方法もありそうです。この場合の「負担」はクルマという利便性を捨てたこと、「お楽しみ」はグリーンなカードという名誉です。別の方法もあります。バスの燃料をバイオディーゼルや天然ガスにすると、CO2削減になりますが、コストがかかります。そこで、このコストを市民に負担してもらうことを考えます。ちょっと値段を高く設定した「グリーンバスカード」を買うことで市民に負担してもらう代わりに、自分の日常の「足」をCO2削減することができるというしくみです。

こういった、一般市民による負担のしくみを機能させるには、地域の人気者や有名人、イベントなどを活用することも効果があります。市内で開く大きなイベントやコンサート、映画館では、かならず上記のCO2削減プランを告知するとか、一歩踏み込んで、コンサートでアーティストが直接訴えた場合は、市もイベントの告知場所を無償で提供するとか。横浜は2つのサッカーチームとひとつのプロ野球チームがありますから、彼らに協力を依頼して、試合の前後の告知や、ポスターやTV、ラジオ番組に登場してPRしてもらう方法もあります。市民が、あちこちでCO2削減プランに参加しよう、というメッセージを受け取るように、露出を徹底して増やすことが重要です。

設備についてのコストは、税金とセットで低減する方法があります。住宅の窓を合わせガラスにしたり、壁を高断熱にすると、省エネ効果が高まり、CO2削減ができます。通常、こうした家を建てると、家の資産価値が上がり、固定資産税が高くつきます。そこで、省エネ設備で高くなった分は、価値が上がったと見なさないという制度を導入できれば、省エネ型の家が建てやすくなります。省エネ設備の消費税を特例で下げるという方法もありますが、これは国の施策になるために市では難しそうです。

横浜市では、「緑の税金」を検討中です。緑化にかかわる税を広く薄く集めようというものですが、この税を森林だけでなく、省エネやグリーンエネルギーにも使えるようにすると、固定資産税の低減から一歩踏み込んで、省エネ住宅を建てた人に補助金を出したりできます。逆に、省エネを標準にして、省エネでない家には違反税を課すという方法もあります(課税根拠が難しそうですが)。

省エネ設備のような、先行投資、あとから回収という手法の場合は、金融手法が重要です。地域の金融機関のCSR活動を、省エネ投資やエコ投資に集中してもらい、いろいろな融資商品を作って、省エネ設備を買うと金利が安くなるという施策を打ってもらうと、導入が進みます。金融機関は、金利を下げた分の負担をすることで、CO2削減に貢献する企業としての評価を受け取れます。店頭に「エコ融資」のポスターやパンフレットが並ぶことで、理解もの広がるでしょう。

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さて、今こんなところまで整理できてきたのですが、まだもう一歩整理が仕切れてなくて、もどかしい感じです。ただ、政策的に見ると、環境価値とコスト、それに時間のパラメータをどうやって組み合わせるかというマトリックスで考えられそうだと言うところまで、何となく見えてきました。

「あの手この手」の「合わせ技」が重要なことはわかっているのですが、戦略的に、どのように「合わせて」行けばいいのか、その普遍的なメカニズムがつかめないか、いろいろ考えているところです。

投稿者 paco 20:15 | コメント (0)

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