手作りのお菓子というと聞こえはいいが、ようはインスタントの材料だ。母は料理があまり得意ではなかった。でも子どもには、手作りのお菓子を食べさせたい。と思ったのだろう。暑い夏の日、市場から帰ると「ゼリー作ったげるよ」と何やら、台所でしはじめた。幼稚園から帰ったわたしは、飛びはねるように、台所に行き、母の手もとをのぞきこんだ。緑色の粉を水で溶いて、銀色の花型の容器にお玉で流し入れる。それを冷蔵庫で冷やし固めるだけのこと。それでも、わたしは、わくわくした。何度も冷蔵庫を開けては、母に「まだやから、待ちなさい」としかられた。
3時のおやつに、念願のゼリーをお皿にいれてスプーンをそえて、ちゃぶ台に出してくれた。目に鮮やかなグリーン。透きとおってプルプルふるえている。わたしは、こんな綺麗なお菓子は見たことがない。と、おとぎ話からでてきたように思って、飽きずに眺めていたことを覚えていり。残念ながら、味の記憶はない。ただ透きとおった緑色の美しい花型の固まりと、お皿にゼリーをのせる時の母の緊張した顔が、半世紀過ぎた今でも、わたしの夏の風物詩として、残っている。
3時のおやつに、念願のゼリーをお皿にいれてスプーンをそえて、ちゃぶ台に出してくれた。目に鮮やかなグリーン。透きとおってプルプルふるえている。わたしは、こんな綺麗なお菓子は見たことがない。と、おとぎ話からでてきたように思って、飽きずに眺めていたことを覚えていり。残念ながら、味の記憶はない。ただ透きとおった緑色の美しい花型の固まりと、お皿にゼリーをのせる時の母の緊張した顔が、半世紀過ぎた今でも、わたしの夏の風物詩として、残っている。