カメラを持って出掛けよう

仕事と音楽の合間に一眼レフとコンデジで撮った写真を掲載しています。

もうそろそろ 2

2021年11月27日 | 音楽
昨年はコロナ禍で全てのコンサートが中止となりましたが、今年は定期演奏会も行えたし、来月は大阪市内で二度目のコンサートが予定されています。
このようにして過剰までとも言えるコロナ騒動が作り上げた変な壁に少しずつ風穴を開け、早く元通りの生活を取り戻したいものだと感じています。
マスコミは過剰なほど煽り立てて来た訳ですから、もうそろそろ先頭を切ってその作業に取り掛かっては如何と思う今日この頃です。
だって田圃のど真ん中や山海での中継にマスクは要らんでしょう(笑)



小説「Obralmの風」




「おーい、久保!」
コースから呼ぶ中島の声で岳は我に帰った。
ブッシュの間からコース側に顔を出すと中島はアイアンクラブを肩に担いだような格好で待っていた。
「長い小便やな、もう弓田と寺井はグリーン手前で待ってるぞ」
「すまない、じゃあここからワンペナで打つわ」
岳はつい今まで英霊と話していたことを言わなかった。
話したところで仲間がそのまま信じてくれるとは思わない。
しばらくこのことは岳一人の胸のうちにしまっておこうと考えた。
顔にアゲインストの風を受けながら中島と歩いた。
わずかな会話時間だったが、岳はもっと伊藤という英霊に話をしたかった。
今夜でも一升瓶を片手にコースに忍び込んで彼ともっと語り合いたい欲望が湧き上がった。
そして今自分が病魔に侵されていることを告白して、今後の行くべき道を彼に示して欲しいと思った。
しかし夜になると岳の一過性の衝動は虚しく消え、旅行の打ち上げと称してチャモロ料理のディナーに行くことになった。
結局閉店まで飲み食いして酔った感覚は昼間のことが遠い過去のように思われ、岳はタクシーの窓から昼間の方角の空を見た。
空には大きな雲が浮かび、その切れ目から信じられない数の星が瞬いていた。
道路沿いの茂みの中で伊藤という兵士が起立して岳に敬礼をしているように思えた。
それは岳を見送ってなのか、彷徨える魂の存在を訴えかけているのかが判らなかった。
所詮岳の心に宿る妄想が自己に語りかけ、幻像を脳裏に投影しているのだと思う。

翌朝岳達は日本へ向けて飛び立った。
仲間たちはこの南の楽園に未練を残すかのような溜息を連発させていた。
岳だけは複雑な心境で機内から滑走路を眺めた。
(伊藤さん、あなたは何のために私の前に現れたのですか。本当は何が言いたかったのですか?)
椰子が生い茂る中に彼はどんな気持ちで岳達を見送っているのだろうか。
やがて搭乗機は急上昇して真っ青な空に向けて飛び上がった。
眼下に広がる大海原に数え切れない数の白波が忌まわしい過去を隠すかのように美しく輝いていた。
短い旅行だったが岳は南の風に延命の可能性のような錯覚を感じたと同時に、伊藤という謎の英霊との出会を体験した。
それが今後の自分にどう関わって行くのかは判らない。
関空に着いたのは昼過ぎであったので弓田の提案で岳達一行はターミナルビル内の和食レストランへ向かった。
「じゃあ、我々のゴルフツアーが無事終了したことを祝して乾杯!」
弓田は中ジョッキー掲げた。
「あー、やっぱり日本のビールは美味い。それに天ぷらは最高や」
口の重い寺井が珍しく叫んだ。
その時突然背中に違和感を感じ岳はジョッキーを置くと、上腕部を回して肩甲骨を周辺の筋を伸ばした。
「おい久保どうしたんや、遊び過ぎて肩凝りか」
「いや何か背中が・・・」
岳は機内では何とも感じなかった背中に鈍痛のような張りを感じた。
(もしかして・・・)
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