「また来たニャ」美術館入り口 警備員との攻防再開(20/06/02)
中国の“常軌を逸した言動”が容易に理解できる 北京大教授の注目論文「全面的な対立に向かう」
【新型コロナと米中新冷戦】 北京大学国際関係学院の王緝思教授の論文「新型コロナウイルス流行下の米中関係」は、現在の米中関係に関する必読の論考だ。そこには、歴史上最悪の状況にある米中関係について、「中米両国は全面的な競争から全面的な対立に向かう」と率直に記述されている。以下は、その注目点だ。 (1)41年間の中米国交の歴史の中で、私たちの米国に対する不信と反感は過去に例がないほど高まっている。 (2)今後、中米関係における矛盾は続き、日増しに緊張が高まるだろう。妥協する余地と引き返す可能性はますます少なくなる。中米両国は全面的な競争から全面的な対立に向かい、いわゆる「トゥキディデスの罠(=既存の覇権国と新たに台頭する大国が戦争に至る罠)」に陥る可能性を排除することができない。 (3)この趨勢(すうせい)が続くと、主要になる戦略は「新冷戦」を避けることではない。 (4)新型コロナウイルスの流行は、中米関係に大きな打撃を与えた。両国関係の悪化のスピードは加速し、政府間交渉はほとんど凍結されている。戦略の相互不信は日増しに深刻になり、国内における互いの国に対する反感は前例がないほど強い。 (5)長期間にわたって、「米国に対しては爪を隠して対応すべきだ」とする考え方が浸透していた。現在、この考え方は世論の主流から外れ、その代わりに「米国と真っ向から対峙(たいじ)し、恐れずに力を見せつけるべきだ」という意見が主流になっている。 (6)米国による反中言動への中国政府と国民の容認度は著しく低下した。米国による攻撃を中国が容認することはもうない。中米間の情報戦争、世論における論争、外交戦争はますます激しさを増し、今や後戻りすることが難しくなっている。 (7)米国が対中政策を大きく転換し、中国がそれを認識して戦略、考え方、具体策を変更し、競争、闘争の方向へ断固としてかじを切ったことをこれら全てが明らかにしている。米国に対する幻想を捨て去り、非常に危険な挑戦に対する備えを行い、恐れず、巧みに戦い、競争意識を高めなければならない。 ここには、トウ小平の「韜光養晦(=爪を隠し、チャンスを待つ戦術)」を完全に捨てて、米国と本格的に対決するという中国の決意が満ち満ちている。米中新冷戦の時代に入ったのだ。 この論文を読むと、新型コロナ禍に伴う中国側の沖縄県・尖閣諸島周辺や南シナ海での強圧的な振る舞い、中国に感謝しろという不遜な「感恩外交」、軍拡の継続など、中国の常軌を逸した言動が容易に理解できるのだ。 ■渡部悦和(わたなべ・よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書・共著に『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)、『台湾有事と日本の安全保障』(ワニブックスPLUS新書)など。