わくさき日記

千葉県習志野市の司法書士事務所の日常です。

相続放棄と財産放棄

2017-06-06 07:35:34 | 司法書士
相続のお話をしているとたまに出てくるのが、相続放棄の話です。

相続放棄とは、民法915条に定めている手続きで、自分のために相続開始があったことを知った時から
3か月以内に家庭裁判所にその旨の申述をすることで行うことができるものです。

この相続放棄をすると最初から相続人でなかったことになります。

相続が開始すると相続人は、現金・預金や不動産といったプラスの財産のほか、借金のようなマイナスの財産も承継します。
そのため被相続人が借金だらけだった場合は、相続放棄も一つの選択肢となります。
相続放棄をすると、最初から相続人でなかったことになるので、相続放棄をすることによって借金を承継しなくてよくなります。

一方、「私は相続放棄をしている」と話されている方にもよくお会いします。

その時「裁判所の手続きされましたか?弁護士さんとかとお話したりしましたか?」とお伺いするようにしていますが、
裁判所にはいっていない、弁護士にもあっていないというお返事の方も多いです。
この場合の「相続放棄」は、遺産分割協議でプラスの財産を承継しなかった、いわゆる「財産放棄」のことなんだと思います。

とはいえ、相続放棄でも財産放棄でも結果的に一緒なのでは?

うーん、そうですね。日常生活レベルでは、もしかしたら違いが表面化せずに、違いは分かりにくいかもしれません。
ただ、法的には全然違うんです。

相続放棄は、先も言いましたように、その手続きをすることによって最初から相続人とはなりません。
したがって、被相続人の財産分けをする遺産分割協議に参加することはありませんし、今後の相続に関する手続きに関与することも基本的にはありません。
また、仮に、マイナスの財産があったとしても、最初から相続人ではないので、借金を承継することはありません。

一方、財産放棄は、遺産分割協議によってプラスの財産(例えば被相続人名義の自宅の持分とか、預貯金とか)をもらわないということです。
プラスの財産はもらいませんが、相続人には違いはありませんので、遺産分割協議書に押印等をする必要がありまし、相続に関する手続きに関与を求められることになります。
また、借金は相続人だけの遺産分割協議だけでは、相続人の一人に引き受けさせることはできません。
借金には必ず債権者(貸した人)がいますので、もし、相続人の一人を債務者としたければ、別途その債権者と話し合う必要があります。
なので、債権者がその話し合いに応じなければ(応じる義務はない)、財産放棄をした人も含め、相続人全員が法定相続分の割合で借金を承継することになります。

このように、相続放棄と財産放棄は大きくことなり、相続放棄をしたからもう相続の手続きは関係ないと思われていても、それが財産放棄だった場合は、相続人として名義変更等の手続きに
ご協力をいただく場合もあります。