「20世紀の科学的偉業を三つ上げろ」と言われると、アインシュタインの「相対性理論」は間違いなく入るだろう。後の二つは人によって意見が異なるだろうが、私はニコラ・テスラの「交流システム」と「抗生物質」を上げる。
交流システムの大半の特許は19世紀に獲得しているが、実用化したのは20世紀になってからと考えていいだろう。
「抗生物質」に個人名を上げなかったのは、真の発見者が特定できないからだ。日本人だった可能性もある。
科学の世界でも一番手争いは熾烈である。事実よりも政治力がものを言う場合が多い。
今回の大発見も、現在のところ「今世紀最大の発見」と称しても大げさではないだろう。よく「ノーベル賞級」などと言うが、ノーベル賞など一年にぞろぞろ大勢が受賞しているので大したことはない。
皮膚からES細胞(全能性細胞)が造成されれば、臓器移植などもはや不要になるし、クローン技術も医学的には無意味になってしまう。
1996年に体細胞クローンのヒツジ「ドリー」実験に成功したスコットランドの研究者イアン・ウィルマット氏が「山中教授らの研究成果を見て、ヒト・クローン胚の研究を断念した」と述べているのも頷ける。臓器移植もクローンも倫理問題が重くのしかかっていたからだ。
ES細胞からは人体の全ての器官を作ることが可能なので、もはや人体は自動車と同等になった。調子が悪くなった臓器は手軽に交換できる時代が訪れようとしているのである。
行き着く先は「不老不死」である。こうなればなったで大問題が発生するだろうが、まだ遠い将来の話で、我々が生きている時代にはそんなことで悩む必要はない。
ただ、解せないのは、こんな世紀の大発明が全く別の場所で二人同時に発表されたことだ。どうやら日本の方が高く評価されている雰囲気だが、相手はアメリカである。どんな手段を打って出るかは分からない。
皮膚の細胞から「万能細胞」を作ったのは、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授と、米ウィスコンシン大学マディソン校ジェームズ・トムソン博士の研究グループである。
山中教授は米科学誌「セル」に、トムソン博士は米科学誌「サイエンス」に、それぞれ研究成果を発表した。
山中教授のグループは36歳女性の顔の皮膚を用いて、トムソン博士のグループは新生児の包皮細胞を用いて、それぞれES細胞と同等の万能細胞を作り出した。
科学というと、非常に論理的な世界であるようなイメージがあるが、その舞台となっている大学や研究施設はお世辞にも論理的に運営されているとは言い難い。
今回の同時発表も事情通には分かっているのだろうが、その方面には疎い私には皆目分からない。
今回の業績は韓国の某教授とは違って捏造ではないだろうが、裏側では胡散臭い駆け引きが行われているような気がしてならない。
人間の皮膚から万能細胞 京大教授ら、再生医療へ前進