カスタマーハラスメント(カスハラ)は、介護職の士気を奪うだけではなく、心身ともに健康な状態を失ってしまう可能性があるため、事業所全体として避けるべきだ。
実際に、カスハラをなくす取り組みに力を入れている介護事業所もある。
介護職員にカスハラ事案の周知を行うほか、丁寧なサービスを提供するための見直しを図ることなどを行っている事業所も多くみられる。
しかし、カスハラ行為自体はなくならず、利用者やその家族にカスハラの事実をもとにした協議や警告を行っても、カスハラ行為が原因で休職や離職を選ぶ介護職が後を絶たない。
カスハラに関しては、事業所側が当事者に対し対抗をすることが可能だ。
この場合の対抗とは、「契約解除」すなわちサービス提供拒否の措置のことを指す。
しかし、どんなカスハラでも即サービス提供拒否の措置をとることはできない。
次の3つのポイントを参考にすると、サービス提供拒否の要件がわかりやすくなるだろう。
「事業所に被害がなくても、相手に刑事責任を問える場合(違法行為)」
「相手の行為によって、介護職員に被害が出た場合(不法行為)」
「契約違反など、事業所との約束を守れない場合(債務不履行)」
もちろん、単純にサービス提供拒否の措置をとることはできない。
家族のハラスメント行為が対抗の原因となった場合は、利用者に不利益が生じるからだ。
また、不法行為を行ったとしても、要介護者であれば社会に放り出すことはできない。
そのため、サービス提供拒否の措置を講じる場合は、ほかの事業者へのサービス継承手続きを行うことが求められる。
ここまでが事業所の責任となることを覚えておきたい。