「ほっとする一時」のトモロヲさんのリクエストにお答えして少しだけ雨の想い出話を…。
私はあまり雨にはいい想い出がない。特に夏の雨には…。
もう10年前になる。
8月6日。
今でも脳裏に焼きついて離れない。あの日の光景。
たぶんあの日のことを私は一生忘れることはないだろう。
あの日は朝から「バケツをひっくり返したような雨」が降っていた。母の制止を振り切って学校へ部活の練習に行った。部活が終わり、あまりの雨のひどさに母に電話をし、学校で母が来るのを待っていた。学校まではどんなに時間がかかっても車で15分。電話をしてから途方もなく長い時間が流れた。1時間位してからだろうか。学校の方に母から電話があった。
「川が増水していて溢れかかっている。学校まで辿り着けない。危険なので学校に待機していなさい」と。
それからすぐに学校の方に避難してくる人々…。学校近くの別な川が急激な増水で溢れたのだ。雨はどんどんひどくなり、学校のすぐそばまで水はやってきた。
1時間後、公衆電話も不通になった。回線がパンクしたのだ。母と連絡がつかなくなり、私はパニックになった。でもここにいることは分かっているから父と母が迎えに来てくれる。信じるしかなかった。そして雨が止むのをここでじっと待つしかなかった。
夕方になり、夜になり、時計はもう21時を回った。学校で今日は一夜を明かすことになるのかと友人たちと覚悟を決めた時、両親が迎えに来てくれた。ゆっくりゆっくりいつもの倍以上の時間をかけて家まで帰った。家に帰り着いた時、緊張の糸が切れて自宅の玄関でへたりこんでしまったのを今でもはっきり覚えている。
家に帰ってテレビをつけて呆然とした。色々な物が濁流に飲まれ、ものすごい光景が広がっていた。2階まで水に浸かった家。車が流され、腰まで水に浸かりながら歩く人々。浄水場は壊れ、しばらく水が出なくなった地域もあった。橋は流され…。暑い暑い夏なのに。
それ以来、雨の降り方にはひどく敏感だ。怖いのだ。
雨が降るとひどく不安になる。
こんな気持ちを持つのは私だけだろうか…。