葉月のことで、なんだか嫌な予感がして昼に女房に電
話をかけた。
電話がつながらなかったので、何事も無いと安心して
いた。
ところが、夕方になって突然、葉月から電話があった。
珍しいことなので、驚いて出てみると、大泣き状態で
何を言っているかも分からなかった。
ゆっくり時間をかけて話を聞いてみると、実家でもめ
ごとがあったようだった。
少し落ち着いたところで別の話を振ろうとしたら、
「パパ、さようなら。」と
電話を切ろうとしたため、ただ事ではないと思い、ど
こにいるのか聞いてみた。
「海岸に一人で来ている。」と返答があった。
その声のトーンから海に飛び込もうとしている状況が
見て取れた。
これは、話を引き伸ばして落ち着かせないといけない
と思い、別の話題に切り替えようとしたら、「お爺ちゃん、
お婆ちゃん、ママにごめんね」と謝っといてと言い残し、
「パパさようなら。」と言って一方的に電話を切った。
すぐに、女房に電話をしたら、暫くしてようやくつながった。
女房は泣いていた。
そして、すぐ後ろで爺、婆の息遣いも聞こえた。
葉月を抑え込んでいる状況が分かった。
後で確認すると、柚葉と二人きりで実家を出て散歩に向かっ
たらしい。
暫くして、柚葉が「姉ちゃんが海に飛び込む。」と泣きなが
ら実家に戻ってきたとのこと。
慌ててみんなで葉月が飛び込むのを制止しに向かい、間に合
った瞬間だった。
ちょうど、そのタイミングで、パパのところにかけてきた電
話だった。(葉月は最後にパパに伝言をと思い。)
葉月が、何も考えず、海に飛び込んでいたら、大変なことに
なっていただろう。
パパに電話をしてくれて良かった。
あの電話が取れていなかったらと思うと、手が震えた。
その場の壮絶な状況が思い浮かび、すぐにでも島に行こうと
したけど、葉月は、迎えに来ないで欲しいと言っているとの
こと。
迎えではなく、1月3日まで一緒に過ごしたいとの思いだけど
、今、そんなことは通じない。
行ったら、迎えに来たと思い込んで逆上してしまう。
それを考えると、1つの行動であまり刺激もできない。
葉月の思いを尊重して、高速道路の入口で行くのを止めた。
葉月は、パパは嫌いと言っているらしい。
心を開いてあげたいけど、今のパパには難しい。
うつ状態の時は、「おまえらが悪い。」といった、凄い悪態
をついている。
思春期と、病気が重なってどうしようもできない状態に陥っ
ている。
何か救う手立ては無いものか・・・
医師からは、話を聞き全てを受け入れることが大切だと言われ
ている。
ただ、葉月は、「話を聞くだけで、何もしてくれない。」と・・・
食事を止めさせることは本気で立ち向かえば簡単だ。
だけど、それは逆に拒食症につながる行為でもある。
どうしたら良いのか本当に思い悩む。
今、考えられるのは、自殺をさせないこと。
葉月とは、1月になったら一緒にバドミントンをしようと約束
している。
その約束を忘れないでほしい。