「 おばちゃん、また3人で温泉でも行こうよ 」
「 ん? こんな時期に?どうしたの? 」
「 いやあ コロナが落ち着いてからでいいから 」
こうちゃんの久しぶりの電話は少し元気がありません。
「 僕、今年はなにもいいことがないんだ。なんか疲れて来たよ 」
「 仕事の事なの? 」
「 ほら去年おじさんが全身ガンで亡くなってから考えるんだよね。
僕らが小さい時は弟と僕の弁当作ったり、親父が三交代もあったりして
家の事してくれたりしてたんだけど結婚することも無く病気になって
病院にかかるのが遅かったせいもあって、独り暮らししてからは
入退院の繰り返しでおじさんの人生って何だったんだろうな・・・と
ふっと思ったりしたときに空き巣に入られたりしてさんざんだよ~ 」
「 そっかあ、コロナ鬱かもね 」
「 うん 仕事もくたくたになるまで頑張ってるけど忙しすぎて
目が覚めたら慌てて仕事に行って、帰ったら泥のように寝て
毎日その繰り返しだろ、これでいいのかなって・・・」
「 職場と家の往復だけになってしまったんだ 」
「 うん、コロナってきついよ~ 、だんだん追い詰められていくようで 」
こうちゃん、精神的にかなり参ってるようです。
「 長く働いてるとね、みんなそんな時期があるものよ。絶好調とスランプは波みたいなもの。
おばちゃんもそんな時があったもの。ほとんどこれが天職だと信じられた仕事でも
迷いや不安て襲ってくるものだし、その繰り返しなんだけど渦中にいると
なかなか抜け出せない時もあったりしてね。若い時には見えなかったいろんなことが
視野を広げて具体的に見えてくる大人になったということかな 」
「 そうなん、みんなあるん ? 」
「 そうよ、みんなあるの。こうちゃんだけが襲われてるわけじゃないよ 」
話してるうちにいくらか落ち着いたこうちゃん
「 でもさ、気分転換もしたいから温泉行こうよ。」
「 いいよ、落ち着いたらいこいこ 」
母の居なかった家庭で支えてくれてたおじさんの孤独な死が
疲れた心に追い打ちをかけたのでしょうね。
コロナ禍で長く閉塞的な環境にいると
殊に一人暮らしは思わぬ落とし穴があるようです。
できるだけ親しい人と話したりすることも大事ですね。
大丈夫、弟のとし君一家もすぐ近くにいるしお父さんもいてくれる
ひとりじゃないよ・・・
桜も咲いてきたしもう春だよ ^-^