鍼灸師「おおしたさん」のブログです

東京都港区南青山で開業20年 / 6月から広島に帰る予定です

イザベラ・バードの日本奥地紀行

2023年10月22日 | 趣味的な…(読書や映画、旅行、写真等)
イザベラ・バードが愛した日光。
また行ってみたいなぁ。



【2023年10月のブログです】
このホテルを選びこのホテルに選ばれる人はどんな人なのか。宿泊した著名人がなぜ何度も訪れたがるのか。最初に感じた「惜しい」の先にあるものを知りたい気持ちが沸々とと湧き出している自分がいる。

イザベラ・バードの日本奥地紀行

日光金谷ホテルの館内ツアーを案内した初老のスタッフの話がとても面白かった。中でも「イザベラ・バード女史の話なら何時間でもできる」との言葉に興味を抱き、東京に戻って早速本を探してみた。

調べてみたら、著書はすぐに見つかった。なんでも体の弱い、言葉もわからないイギリスの中年女性が、通訳と人夫を雇って北海道を目指すというのだから、興味を持つのも当然だ。当時の日本だが、鎖国から解放され、海外との交流が活発になった頃だったとはいえ、まだ制度面の整備が追いつかず、外人が日本を旅する時は相当な理由がないと許可が下りなかったという。そんな時代にイギリスの女性が何故一人旅をできたのか、知れば知るほど興味は尽きない。

旅行の目的は純粋に日本の生活文化を見たいという思いと、キリスト教を普及する可能性を探るためという二つだったらしいが、イザベラ・バードはその旅で、美しい景色や人々の質素で慎ましい生活、そして値段をふっかける人が全くいない誠実な日本人といった、表の日本に触れているだけではない。表の面だけでなく負の面にもしっかり触れているのが本書の面白いところ。その貧しい暮らしぶり、例えば寝床には雨風が吹き込むだとか、至る所で蚤がたかるだとか、顔中吹き出物だらけの人が多く男は裸で女は腰巻きだけ、人は愚鈍で無感動のように見え、既婚の女性は青春を知らないような老けた顔、子どもは汚く皮膚病に罹っている子ばかりだとか。そんな忌憚の無い描写が延々と続くのだが、その容赦の無い貧しさへの断罪に、裏表なく日本を観察したことが窺えるのがとても良い。昨今テレビでは日本の素晴らしさを伝える番組が目白押しだが、日本が清潔だったなんてとんでもない。私の小さい頃は、ゴミや空き缶、プルタブがそこここに捨てられていた。国鉄当時は誰もが車内でタバコを吸い、とても汚かった。綺麗好きともてはやされて、大して時間が経っていないのに、世界で一番綺麗好きとか言われてほくそ笑むとか、ちゃんちゃら笑ってしまうのだ。

そんな話はさておき、私としては「イザベラ・バードの日本紀行」上巻、第一三信(P184)にある鍼とお灸のくだりを原書で読んでみたいと思っている。お灸痕の無い背中はまれだとか、大半の家にモグサがあるだとか。金谷ホテル創業者の金谷氏が、素人なのに鍼を使っていたとか。ここのくだりが原書でどう書かれているのかとても興味がある。

日光金谷ホテルに泊まったご縁でイザベラ・バード女史を知り、その古き良き貧しき日本を垣間見る事ができた。150年前の日本の生活、まだ旅した事のない東北、いつの日かイザベラ・バード女史の足跡をたどってみたいと思うほどに、本書はなかなか面白い。

 


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