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三菱重工、特損398億円 15年3月 大型客船工事で(日経より)

三菱重工、特損398億円 15年3月 大型客船工事で

三菱重工が、2015年3月期に大型客船工事で巨額の損失を計上するという記事。会社のプレスリリースによると第2四半期で計上済みのようです。

「三菱重工業は31日、2015年3月期に大型客船工事で398億円の特別損失を計上すると発表した。米国のクルーズ客船大手から受注した2隻について、設計変更などに伴う費用がかさむ。同客船での特損は前期の641億円に続いて2度目だ。宮永俊一社長は同日の決算説明会で、造船事業の構造改革を急ぐことを表明した。

今期の連結純利益は前期比38%減の1000億円と、従来予想から300億円引き下げた。損失が出るのは米カーニバル社から受注した大型客船2隻。12万4500総トンの3300人乗りで、国内建造の客船として過去最大だ。船主から宿泊施設など内装の設計変更を求められ、作業が大幅に遅延した。その間に資材価格が上昇したほか、人件費も膨らむ。」

前期損失を出したときにも当サイトで取り上げましたが、利益が出る工事は営業利益、大きな損が出そうだという場合は特別損益では、経営成績をゆがめます。現行の会計基準上は微妙なところなのかもしれませんが、黒字だろうと赤字だろうと、営業活動に関係する損益ですから、営業損益にするのが正しいと考えます。

2期にわたって大きな損失を計上したわけですが、今後状況が改善された場合には、営業利益にするつもりなのでしょうか。

客船事業における特別損失計上に関するお知らせ(三菱重工業)

「客船建造に関しては、本年3 月に新たなプロジェクトマネジメント体制を組成して工事遂行してきましたが、当年度に入って、客先とともに本船の先進的な要求仕様を確認・追求していく中で、パブリックエリアやホテルパート等の総合配置や関連付帯設備において、設計の基礎に立ち戻る事象が発生し、これらの対応において設計作業のやり直しが大量に生じたことにより、設計作業が大幅に遅れることとなりました。設計リソースを追加投入するなど対策を推進してきましたが、当第2 四半期に入り、出図完了が想定より遅延することが見込まれ、1 番船の建造工程の見直しを余儀なくされました。また、1 番船の設計作業の遅れが2 番船の出図遅れにも繋がり、2 番船の現場工程にも影響を与えることとなりました。これにより、設計費の悪化、後続の現場工程における後戻り作業や工程遅れを取り戻すためのラッシュワークに伴う現場コストの悪化、設計の仕様変更や物量増加に伴う調達コストの悪化が発生する見込みとなりました。」

大きなプロジェクトになれば、原価管理上、毎月度、予想原価を見直すのが普通だと思われますが、第1四半期では原価の見積りを見直さなかったのでしょうか。

平成26年度 第2四半期決算概要(同上)

「なお、当社は客船事業に関し今後発生が見込まれる損失を、継続的な事業として発生する損失ではないものと位置付け、特別損失に計上しています。」(決算短信3ページ)

客船事業自体は、これに懲りてやめてしまうのではなく継続するようですから、ちょっとおかしな理屈です。

また、セグメント別の損益が説明資料で開示されていますが、営業損益までなので、今回の特別損失はどのセグメントにも反映されていないようです。これではセグメント別の本当の状況はわかりません。

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