子供の頃に住んでいた家は、祖父、祖母、父母、叔母、
そして父の友人が暮らしていて、そこにたくさんの人が出入りしていた。
野球中継がある日はいつも人であふれていた。
その中にみんなとは違う話し方をする人がいて、一風雰囲気も違う
変わった人がいた。
ある日、テレビを見ながらその人が泣いていた。
その人の肩を叩いて慰めている祖母の姿、祖母が話した言葉も
よく覚えている。
「あんたも今日から日本人やさかい堂々としたらよろしい。」
その日は1972年5月15日、当時私は10歳だった。
その年の1月、日米の首脳はカリフォルニア州サクラメンテにつどい、
沖縄本土復帰の日程を決める話し合いをした。
首脳会談に先駆けて、当時の福田外相とロジャース国務大臣の会談が行われて
復帰の日をいつにするか話し合ったが、日本側は4月1日を主張し、
米側は7月1日とそれぞれ都合の良い日を提示した。
どちらも譲らず話し合いは平行線。
そこで仕方なく、ちょうど真ん中にあたる5月15日になったという経緯がある。
つまり、沖縄の歴史的1日は「足して2で割る」という方法で決められた。
嘘のようなホントの話しである。
今もあの日のことをハッキリと覚えている。
「あんたも今日から日本人やさかい堂々としたらよろしい。」
今思えば、祖母は失礼なことを言っていたわけだ。